アルボムッレ・スマナサーラ
【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。

[Q]
    仏教の教えは「生きとし生けるものが幸せでありますように」というものでしょうか?


[A]

■ブッダの幸福観は俗世間と違う


    答えるのが難しい質問です。ブッダは、解脱の道を教えることが幸せへの道--苦しみを無くす道だと教えているのです。「苦しみがどのように現れるのか」「苦しみをどのように無くすのか」という二つを人々に教えているのだと。ブッダの教えは人々を幸せにするものだと言っても悪くはないのですが、その程度では全てを語ったことにはならないのです。本当の幸せは解脱に達することなので、一時的なものではありません。私たちが慈悲の瞑想で「生きとし生けるものが幸せでありますように」と思うのは世間的なレベルです。「悩み苦しみが無く幸せでいてください」と。でも「生きる事が誰にとっても苦しみだったらどうしますか?」という問いの答えは「解脱に達すること」なのです。そうなるとブッダにしかできない仕事になってしまいます。ちょっと複雑なのです。
    キリスト教ではイエスがユダヤ人に向かって「私は人類を救うためにやって来ました」と言うのです。本当はユダヤ人のことしか心配していないのですけど、それは大したことじゃないし、そもそも現実的にありえない話でしょう。人は皆、より良い生き方ができるよう頑張らなくてはいけませんが、頑張っても全ては無常ですからね。黄金時代を築いても必ず衰退します。そういう循環から脱出する方法がブッダのメッセージなのです。「私は生命に苦しみと苦しみを無くす道をずっと教えて来たんだよ」というブッダの言葉を噛み砕いて、「みんなの幸せを願う教えだよ」とパラフレーズすることは可能です。しかし、お釈迦様がおっしゃる「幸せ」とは解脱に達することです。これは各自が一人ひとりでやらなくてはいけない仕事です。そのようにしか、説明できないのです。


■出典    『それならブッダにきいてみよう: さとり編3』
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