【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日のテーマは「慢性的な無気力状態から脱出するには?」です。
[Q]
慢性的に無気力だったり、憂鬱だったり、怠惰な状態になっている人は、心に何かが溜まって動けなくなっているのだと思います。そういった状態から素早く脱出するためのポイント、何か行為のアドバイスがあれば教えてください。
[A]
■慢性状態の人にアドバイスは難しい
慢性的な人はアドバイスしても実行しないのですね。悲しいことです。暗さが慢性的になってしまっているのは、ちょっと暗くなった初期の段階で、すぐに暗さを処分しなかったからなのです。私でも時々暗くなることがありますよ。しかし、三分もかからないうちに暗さを消してしまいます。すぐに誰かに冗談を言って、笑いを取って消してしまうのです。そういうことをしなくても、すぐに他のことをやっていますから暗さは全然長持ちしないのです。それどころか「そんなことがあったんだっけ」とすぐ忘れてしまいます。
落ち込んでしまった時、感情を処分するのが下手な人がいます。それから、その落ち込みをコピー(妄想)してしまう。すると、もっと落ち込みが強くなる。また処分しない。そういうことを繰り返し、繰り返しやってしまいますから、暗い感情がもう手に負えないレベルにまでなってしまうのです。
■心をゴミ屋敷にしないこと
精神状態があまりにも酷いゴミ屋敷の状態になってしまって、ゴミの山がちょっとした地震で崩れて、あぁ自分は下敷きになって死んでしまうかもしれないと自覚するところまで来てしまう。それでは遅いのです。自分でゴミ(暗い感情)をどこかから持ってきて置いておく。週に二回はゴミの日があるから捨てればいいのですが、持って行けないほどのゴミをためこんでしまったらどうしますか? もうリミットを超えてしまっているのです。
そんな感じで、自分の中のゴミの山が発火したらどうしよう、崩れて生き埋めになったらどうしよう、そんなことを今さら思っても遅いのです。しかしそういう人間もいますね。
今、余計な話をしましたが、これがアドバイスです。このゴミ屋敷の例えで少し驚いて欲しいのです。ちょっとした感情、ちょっとした暗さ、ちょっとした落ち込みを放っておかないでください。放っておくと、あっという間にゴミ屋敷になってしまいます。
■解毒剤を自分で発見する
何としてでも暗い気持ちを破ってください。自分で解毒剤を発見して欲しいのです。解毒剤の発見は自分でするしかない。お釈迦様にもできません。お釈迦様は、lobha・貪に対しての解毒剤としてalobha・不貪、dosa・瞋に対してはadosa・不瞋、moha・痴に対してはamoha・不痴と言ってはいます。言語ではわかりにくいのですが、試してみれば解毒剤は発見できると思います。
まず、なぜ今の精神状態になったのかと観て、どうすればこんな気持ちになるのか考察する。例えば、腹が立っている人がいるとしましょう。いつも不機嫌です。なぜ不機嫌になるのか?そこを調べると、なるほど、こういうときにこうなるからだとわかる。そこで「では、こうすればいい」というふうに解毒剤が発見できるはずなのです。発見するためには丁寧な自己観察が必要なのです。
ですから、まずは泳げなくてもとにかくプールに飛び込むことです。何とか気分が変わりますよ。
■出典 『それならブッダにきいてみよう:こころ編1』