武井浩三(経営思想家、社会活動家、社会システムデザイナー)
湯川鶴章(ITジャーナリスト)


社会システムデザイナーとして活動されている武井浩三さんと、テクノロジーの第一線で次のトレンドを予測し続けてきたITジャーナリスト湯川鶴章さんが、「Web3から創る、多様でマインドフルな時代の可能性」をテーマに、近未来のお金のあり方や組織のあり方、富を分かち合う方法について語り合います。全5回記事の最終回。


第5回    ヒエラルキーがない組織へ


■DAO運営の技術「相関スコア」

湯川    最近、DAOという新しい組織の形態が誕生しました。DAOはWeb3時代の株式会社に相当するものですが、非中央集権自律型組織であるところが特徴です。同じような目的を持った人が集まったオンラインのコミュニティで、運営にブロックチェーンが使われています。簡単に言えばヒエラルキーがない組織という感じです。

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    DAOでは組織の「相関スコア」を計算式で取ることができます。
    たとえば日本の社会は高齢者が多いですよね。問題は、高齢者が多いのに選挙では1人1票を守り通して、高齢者の意見が通りやすくなっているところです。我々は若い人たちに「君たちの未来なんだから選挙に行きなよ」と言いますけど、行っても仕方ないんですよ。だって数の上で絶対高齢者には勝てませんのでね。だから若い人たちが政治に関心を示さなくなって、選挙にも行かなくなって、より悲惨な状況になっているわけです。
    しかし相関スコアを使えば、人口動態をベースに1票の重さを自動的に変えられます。たとえば今年であれば70歳の人の票の重さは0.5ぐらいになって、20代の人の票の重さは1.82くらいになります。数の少ない人の票の重さが重くなるんです。
    重みづけをした上で集計をすると、少数派の意見が通りやすくなります。こういう仕組みを利用することによって、最大多数が強くなる傾向を少し変えることができるという話です。


■忖度が起こらない仕組みづくり

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    相関スコアを使えば忖度も起こりづらくなります。
    政治の世界や経済の世界では、権力を持っている人たちの間で忖度が行われていてムカつきますよね。なぜムカつくのかと言うと、その仲良しグループに自分が入れてもらえないからです。もし仲良しグループに入れてもらえていたらきっと嬉しいと思いますよ。
    忖度ってなくならないと思うんです。というのは、仲のいい人にいい思いをしてもらいたいというのは、愛情のひとつだからです。グループの外の人にとってはひどいことかもしれないですけど、仲間内では非常にいいことなんですよ。
    だから忖度できないようにするには、仕組みとして作るしかないんですよね。
    SBTによって人のバックグラウンドがわかるようになりますので、たとえば慶應大学出身の人が、みんな同じところに投票しているとなったら、慶應大学出身の人の票の重さを軽くすることができます。男性の多い組織だったら、女性の票を重くするようなことも計算式で自動的にできるようになります。
    そういう設計ができるようになるのがSBTです。ちょっと皆さんの理解が難しいところもあるかと思うんですけど。


■みんなが投資家になる社会へ

湯川    武井さんはDAOが出てくると、どんな社会になると思いますか?

武井    経営の文脈で言うティール組織や自律分散型組織はDAOなんですよ。特定の誰かが支配していないという思想が一緒なので。
    今までの政治や大企業って「決める人を決めていた」んですよね。だけど、これからはみんなで決めるという状態になっていきますし、その決め方も多様化していきます。
    民主主義はブロックチェーンの出現によって、どんどん形を変えていくと思います。多数決も湯川さんが仰ったように重みを調整する多数決になるでしょうし、オンラインを使えばいくらでも会話できるので、物事を話し合いで決めていく直接民主みたいなものもどんどん生まれてくると思います。

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湯川    投票も一瞬でできるようになりますので、今までみたいに年に1回集まって投票しましょう、みたいなこともなくなるでしょうね。
    初代デジタル大臣の平井卓也氏が講演会で、「日本企業に勤めるだけで生活できる時代は終わります」と仰っていました。もう経済は上向かないから一つの会社に勤めているだけでは満足な生活ができなくなります。兼業するようにしてください、というのが政府の方針ですよね。
    これからの世の中にはDAOがたくさん出てくるんじゃないかと言われていますので、本職を持ちながら自分が応援したいDAO、たとえばカマコンバレーとかZen2.0とか、応援したいDAOのお手伝いをしたりする時代になっていくのではないでしょうか。お手伝いをしたらトークンがもらえますし、トークンというのはだんだん価値が上がっていったりもしますから、投資にもなるわけです。
    いずれ一人の人がいくつものDAOに貢献して、そこからトークンをもらい、そのトークンを投資することによって、AIが生む富の恩恵を受けることができる社会になっていく、と最後に予言しておきましょう。そういう時代になっていくのは間違いないと思います。僕はもうほぼほぼ確信しています。
    ということで、今日のお話はこれで終わります。駆け足ですみませんでした。ご清聴ありがとうございました。

武井    ありがとうございました。DAOは、ブロックチェーン技術の社会実装であると同時に、共生思想の社会実装でもあると思っています。人類は今、資本主義と現行貨幣システムによる支配構造の限界に達しています。それを乗り越える技術がブロックチェーンであり国家に依存しない仮想通貨(暗号資産)であり、共同体であるDAOであることは明らかです。しかしながらこれからの技術は、思想の社会実装でしかなく、先立つものはどこまでいっても人間の心だと思っています。ブロックチェーン上で資本主義を展開しても、格差の助長にしかなり得ません。暗号資産を投機の対象として自分の利益を追求しても、奪い合いの経済は終わりません。こういった人類経済の本懐を問い直すことこそが、今問われているのではないでしょうか。


2022年9月11日    Zen2.0 2022    鎌倉・建長寺にて
構成:中田亜希
撮影:編集部



第4回 Web3とAIが生みだす富

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Zen2.0
禅とマインドフルネスの国際カンファレンス2023
開催へ向けて

    ZEN・マインドフルネスと先端科学の国際カンファレンスZem2.0。
    9月2日(土)、3日(日)に会場(北鎌倉    臨済宗建長寺)+オンラインで開催。
    テクノロジーと古来の叡智のコラボレーションから、調和的な世界を創造します。

2023年    Zen2.0のテーマ

Be like Water    加速の時代に、水のごとく在る
〜Source, Flow, Alignment〜

    世界のあちこちに顕在化している分断や対立だけでなく、地球温暖化の問題や大手テック企業での大量解雇・AI技術の加速度的な進展など、時代のスピードは加速し、変化の大波が明らかに来ています。
    そのような環境下だからこそ、私たち一人ひとりがしっかり本来の自分・大切なコアの価値観(Source)に繋がり、そして水源から湧き出る泉が川となって流れるが如く、そこからのエネルギーで自然な流れ(Flow)が創り出され、そして、私たちのコミュニティ・社会・地球の中でそれぞれのパーパスに繋がったアクションに繋がり(Alignment)、広い海へと循環・浸透していく。今年のZen2.0ではその想いを「Be like Water    〜Source, Flow, Alignment〜」という言葉に込めました。
    禅語に「一滴潤乾坤(いってきけんこんをうるおす)」という言葉があります。一滴の水が大地を潤し、樹木草花を育み、緑に輝く地球を作りあげている大いなる循環。ひとしずくの水滴が、循環の水脈につながっているという事実は、世界がどう変化しようとも、古来から今も変わりません。私たち一人ひとりが、自分の思考や感情・身体との関係を深めることで、この「ひとしずくの力」に気づき、内面から湧き出る力と世界を繋げ、変化と加速の時代を水のように、自由自在に生きていく。今年のZen2.0では、この本質への気づきを深め、共に語り合える場をつくっていきます。

開催概要

    • 日程:2023年9月2日(土)・3日(日)
    • 参加方法:会場(北鎌倉    臨済宗建長寺)+オンライン(zoom)
    • 詳細・申込:https://www.zen20.jp

登壇者の皆様

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    藤田 一照(曹洞宗僧侶)
    横田 南嶺(臨済宗円覚寺派管長)
    ジョアン・ハリファックス(禅僧、医療人類学者(PhD))
    前野 隆司(慶應義塾大学)
    サティシュ・クマール(平和活動家、Schumacher College創始者)
    ももえ(Zen Eating 代表)
    三宅 陽一郎 (ゲームAI開発者、東京大学)
    荻野 淳也(MiLI代表)
    茂木 健一郎(脳科学者)
    伊藤 穰一(千葉工業大学)
    有本 奈緒美(ネイリスト、社会活動家、起業家、Plumeria Nail代表)
    鬼木 基行(プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(株)
    スティーブン・マーフィー重松(スタンフォード大学)
    和 真音(一般社団法人シンギング・リン協会代表理事)
    原田 友美(イエナプランスクール大日向小学校グループリーダー)
    工藤 煉山(尺八演奏家)
    小笠原 和葉(ボディーワーカー/臨床身体学研究者)
    SHIHO(モデル)
    宮崎 姿菜子(太極拳研究家/気功整体療法士)
    藤野 正寛 (NTT コミュニケーション科学基礎研究所)
    鎌田 東二(京都大学名誉教授)
    水野 みち(株式会社日本マンパワー)
    二木 あい(フリーダイバー・水族表現家)
    oba(ダンサー・モデル・庭師)
    (順不同・敬称略)

プログラムのご紹介

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プログラムの詳細は    https://www.zen20.jp    を御覧ください。
    ※プログラムは変更になる可能性があります。

チケット情報

    チケットは、Zen2.0公式ホームページにて販売開始しております。お得な「早割」は8月19日までの販売期間となりますので、お見逃しなく!

<リアル参加チケット>
    通常:28,000円
    早割:23,000円(8月19日まで)
    学割:9,000円

<オンライン参加チケット>
    通常:12,000円
    早割:8,800円(8月19日まで)
    学割:4,400円

※いずれも2日間通しでの販売となります。
※チケット購入者は、後日動画でのアーカイブ配信をご覧いただけます。

    チケット購入はこちら→  https://www.zen20.jp/?utm_source=other&utm_medium=referral&utm_campaign=nl2

主催:一般社団法人Zen2.0について

    Zen2.0は、先端テクノロジーと禅の精神性の融合を目指し、2017年以来、北鎌倉・建長寺を舞台に毎年開催されている国際カンファレンスです。今年で7回目の開催となります。登壇者は、ヨーロッパ・北米・アジアなど世界各国から参加し、日本語と英語の同時通訳で参加できます。これまで、のべ登壇者数165名・のべ協賛企業70社・のべ参加者数3,000名・コミュニティ4,200の規模に拡大しています。
    ぜひ、Zen2.0のカンファレンスとコミュニティにご参加ください。

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