アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日テーマは「すべての戒律はお釈迦様が作られたのか?」です。

[Q]

    すべての戒律はお釈迦様が作られたのでしょうか?

[A]

    テーラワーダ仏教では、すべての戒律はお釈迦様が作られたものだとします。戒律を定める権利は、お釈迦様だけにあったのです。しかし現実的に考えると、サンガというのは巨大な組織です。お釈迦様の涅槃後もサンガ組織の中でトラブルが起こるはずです。新たに起きた問題に対しては、新たな規則を作らなくてはいけません。しかしテーラワーダサンガは新たな戒律を作れないのです。戒律を定める権限はお釈迦様にしかありません。ですからサンガは新たな問題が起きたら、それが「お釈迦様によって定められた戒律に違反しているので禁じます」と満場一致で決めるのです。しかしそれは新たな戒律になりません。
    お釈迦様は、サンガという組織に将来的に新たな問題が起こるだろうということは知っていたのです。ですから涅槃に入る前に「小罪」「次小罪」に関わる戒律を、釈尊の涅槃後に改良してもよいと許可を与えたのです。しかし第一結集(けつじゅう)でマハーカッサパ尊者が「釈尊によって定められた戒律を命がけで守りましょう」と決めてしまったのです。正覚者(しょうがくしゃ)によって定められた戒律を改良することは、正覚者たる釈尊に対して失礼な態度だ、と。そのような態度をとってはならないと思ったのです。ですからテーラワーダサンガは戒律を改良する権限を放棄したのです。


■出典    『ブッダの質問箱』