プラユキ・ナラテボー(タイ スカトー寺副住職)
第1回 概説および「身体」「感受」に関する組の実践
タイ東北部のスカトー寺副住職で、ヴィパッサナー瞑想法のひとつ「チャルーン・サティ(手動瞑想)」の指導者として著名なプラユキ・ナラテボー師による、アーナーパーナ・サティ瞑想(呼吸瞑想)の解説をお送りします。パーリ経典『出入息念経(Ānāpānasati-Sutta)』(中部経典118)に基づく、ブッダが教えられた瞑想法のすべての行程を、実践上の注意点を交え詳述いただきました。
■2種類の仏教瞑想法
まず、ブッダの瞑想法について概説しておきましょう。
ブッダは「サマタ(Samatha=止)」と称する「集中系」と「ヴィパッサナー(Vipassanā=観)と称する「気づき・洞察系」の2種類のタイプの瞑想法を弟子たちに教えていたと言われています。
「サマタ」はあらかじめ設定した対象に意識を繰り返し向けていくことで、安定した集中力を培うことを目指します。一方、「ヴィパッサナー」は、対象をひとつに限定することなく、いまこの瞬間瞬間、心身に生じてくる現象をありのままに自覚化することを繰り返しながら、洞察を育んでいく方法です。
仏伝によれば、ブッダは出家後、2人の師につきサマタ系の集中瞑想を最高度に極めましたが、自身が目指していた究極的な心の安らぎは得られず、その後、師のもとを離れて、みずからが考案したヴィパッサナー系の洞察瞑想によって、解脱・涅槃に至ったとされています。
ヴィパッサナー瞑想については、パーリ四部経典所収の『マハーサティパッターナ・スッタ(Maha-Satipattana-Sutta=大念処経)』と『アーナーパーナサティ・スッタ(Ānāpānasati-Sutta=出入息念経)』の中で詳しく説かれています。
◆サマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想の特徴
1.サマタ瞑想(samatha-bhāvanā)→ヨコ軸
2.ヴィパッサナー瞑想(vipassanā-bhāvanā)→タテ軸
■「アーナーパーナサティ・スッタ」より
では、『アーナーパーナサティ・スッタ(出入息念経)』をテキストに、ブッダ直伝の呼吸瞑想を学んでまいりましょう。