アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「お釈迦様に対する他宗教からの批判はあったのですか?」という質問にスマナサーラ長老が答えます。

[Q]

    お釈迦様に対する他宗教からの批判はあったのですか?

[A]

    インドでは誰も、お釈迦様を異端者とは思いませんでした。ただ、ブッダのあまりの人気ぶりがバラモン人の癇にさわって、お釈迦様に文句を言うことはありました。
    バラモン人から「あなたは虚無主義者(ニヒリスト)だ」「破壊主義者だ」と批判されたこともあります。バラモン人に言わせれば、「神を信仰したり、神に生贄をする自分たちの伝統を、あなたは壊している。あなたはニヒリストで破壊主義者だ」という主張です。それに対しお釈迦様は、「違います」とは言いません。「まさにそのとおりです。あなたの言うとおり、私は悪を完全に虚無にする主義を説いています。悪を完全に破壊する主義について話しています」とおっしゃるのです。そう言われると、バラモンは反論できません。「ニヒリストでよかった」「破壊主義でよかった」と言わざるを得なくなります。
    ジャイナ教の人々がすきを見つけて仏教を批判しようとし、仏教側も同じことをやっていたのです。それでジャイナ教と仏教が敵対関係にあったかといえば、まったく違います。仏教の修行者たちもジャイナ教の修行者たちも、ほとんど同じ地方で活動していました。お釈迦様が旅に出ると、ジャイナ教の開祖様も弟子たちを連れて同じ地方へ旅に出ます。この両宗教は結局は一緒に生活していました。しかし互いの修行方法についてはすきを見つけて議論するのです。仏教は教えが違ってもみな人間なので仲良くするべきだという立場でした。仲良くするからといって、相手のことを心配するからといって、相手の考えにも従わなくてはいけないという立場ではなかったのです。
    ブッダは他宗教から批判を受けました。しかしそれは意見の違い、修行方法の違いについての議論に限られたものです。仏教が政治的な力によって破壊されるようになったのは、お釈迦様が涅槃に入られて三百年ほど経ってからです。それまでは議論しながらみな仲良く生きていたのです。



■出典    『ブッダの質問箱』