松本紹圭 (僧侶)
ジェレミー・ハンター (ドラッカー経営大学院准教授)

第3回    グッド・アンセスターになる

仏教界において次世代を牽引するリーダー的存在である松本紹圭さんと、マインドフルネス研究の第一人者であり、クレアモント大学院大学のエグゼクティブ・マインド・リーダーシップ・インスティテュートの創始者でもあるジェレミー・ハンターさんによるZen2.0の対談。今世の中に、そしてこれからの世代に伝えたい、「アンビエント仏教」の役割について掘り下げていく。


■死者を媒介とした過去から未来へのプラクティス

松本    私たちには先祖がいます。確かにいます。だけど今ここで生きている私たちも、今Zen2.0に集まってくださっている皆さん全員も、おそらく100年後には、その時代を生きる人たちにとってのアンセスターになっています。その時の未来の目に、私たちアンセスターがどう映るかは、今を生きる私たちが、今をどう生きて行動するかにかかっています。

    そのあたりがこの本のテーマでもあります。

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私たちも100年後にはアンセスターである
    つまり、アンセスターに意識を向けることは、ただ過去を見るだけではなく、同時に自分たちも必ずアンセスターになっていく存在であるから、じゃあ今をどう生きていこうか、と考えることにつながります。過去の人たちから受け取ったバトンを未来の人たちにどう渡していくのか、というふうに、実はアンセスターを思うことは生き方を問う、非常に重要なプラクティスになっているのではないかと思います。
    ですから、二階は「今ここ」にある身体的なプラクティスで、一階は時間をめぐるプラクティス、それも、自分の人生だけではなく、死者というものを媒介とした一つのマインドフルネスなのである。そういうふうに見てみることで、自分自身、一階と二階の構造が今までとは少し違って見えるようになってきました。