なぜ今、仏教なのか   

サンガ新社が伝える仏教とは  


    私たちサンガ新社は、テーラワーダ仏教を中心とした仏教のコンテンツを生み出していきます。仏教の中でも、テーラワーダ仏教は初期経典のパーリ語の仏典に依拠する伝統です。日本語で「長老の教えの仏教」を意味するこの伝統は、スリランカ、そしてタイ、ミャンマー、ラオス、カンボジアなど東南アジアを中心に現在まで、その教え、実践、そして出家者と在家者で構成される社会システムが受け継がれてきています。初期仏教、南伝仏教、上座部仏教とも呼ばれています。 

    その一方で、仏教はその2600年の歴史の中で、多様な広がりを持ちます。 

 日本に6世紀にもたらされた仏教は、そのうちの一つ、朝鮮半島を経由してもたらされた北伝仏教、大乗仏教です。仏教とそれ以前からあった神話の混交した文化に、私たちは生きています。明治期に強引にそれらは剥離されようとしましたが、文化の遺伝子は決して途絶えていないでしょう。そこにこの数十年で、テーラワーダ仏教が日本に本格的に紹介され、広がりを見せています。私たちサンガ新社が文化的な遺伝子を受け継ぐ株式会社サンガは、出版活動を軸に日本文化にテーラワーダ仏教を伝える中心的な役割を果たしていたと思います。そしてそのフロントラインで仏教の智慧をご教示いただいたのが、スリランカ初期仏教長老のアルボムッレ・スマナサーラ師です。新生なったサンガ新社においても、スマナサーラ長老のコンテンツを生み出し届けていきます。 

    人類の貴重な財産である仏教は、日本でもそうであるように、各伝統、各地域によって、その教えや体系を異なえながら現在に受け継がれてきています。そして、この仏教の広がりの中には、チベット仏教という、大乗仏教の最後期に生まれた伝統があります。密教を含んだ修行の伝統で、パーリ仏教とはおそらくもっとも遠い位置にある教えのように見えます。しかし、それらは例外なく、ブッダに発し、ブッダに帰するという、共通の基盤を持ちます。パーリ仏教とチベット仏教を仏教の二つの端、対の翼と考えれば、その両翼を羽ばたかせることが仏教のダイナミズムを大きく働かせることともいえるのではないでしょうか。 

    現在、社会で広く受容され浸透しているマインドフルネスは、心の技法であり、生き方、生活の智慧までを含むものです。この全体性こそが、マインドフルネスが仏教にルーツを持つことの意味であり、重要な点ではないでしょうか。仏教は、その教え、実践において、生き方の指針、生活のあり方を、明示的に伝えます。それは八正道という8つの道で示されるものであり、七仏通誡偈として仏教に普遍の価値として伝えられているブッダの言葉に代表されるものです。それら仏教の伝える全体性を、現代的なフォルムにおさめたものがマインドフルネスである、ということができるのではないか。仏教の文脈の中に、マインドフルネがある。その視点において、私たちサンガ新社は、マインドフルネスのさらなる可能性を見ています。 

    仏教それ自体のみならず、社会問題、脳科学、現代科学など、幅広いテーマを『WEBサンガジャパン』は取り上げていくことになるでしょう。その背景には、上記のような、仏教の深い時間の奥行きと、豊かな広がりがあります。どうぞ、サンガ新社、そして『WEBサンガジャパン』にご期待ください。   



なぜ今、仏教なのか  


    第1弾のテーマは、「なぜ今、仏教なのか」です。環境問題や地域間格差に代表されるように、いま地球規模で、人類史的な変化が起きています。そして追い打ちをかけるように、あるいはその象徴として、収まる気配を見せない新型コロナウイルスによる社会への揺さぶりが続きます。世界を覆うパンデミックは、人類が築いてきた世界の実相を露にするかのように次々と問題を可視化しました。経済、地域、社会、人種、民族、宗教──と、様々な分野でコロナ禍以前から積み重ねられてきた問題が、より浮き彫りになったと言えるでしょう。「分断」という言葉が象徴的に表すように、世界は大きな節目を迎えています。 

    それら大きな意味での「現在」の問題に、仏教の視点から考えてみるのが今回の特集です。そして、現在とこれからの時代を考えるという大きな枠組みのなかで、希望をもたらすことができる一縷の光が、仏教なのではないか──。思想、実践、システムなど、仏教という智慧の蔵には、重要な役割があるだろう。「だからこそ今、仏教なのだ」との思いを込めて、お送りします。 

    WEBを舞台に復活した『サンガジャパン』が『WEBサンガジャパン』です。そもそも今回のテーマは、未完に終わった『サンガジャパンVol.37』を引き継ぐもので、企画の当初は、コロナ禍により焦点が当たっていました。仮題も「ニューノーマル時代の仏教」としていました。しかし、日常が激変したこの1年半余り、もはやニューノーマルという言葉の射程をはるかに超えています。今こそ、オルタナティブな世界を構想する契機であろうと私たちは考えます。 

    2021年9月から12月にかけて、様々な記事を配信していきます。これら記事が皆様の現在を、少しでも善いものにする契機になれば、幸甚です。 

(編集部)   


『WEBサンガジャパン Vol.1』特集「なぜ今、仏教なのか」 目次ページへ

 

『WEBサンガジャパン』とは ?

●『WEBサンガジャパン』は、サンガで刊行してきた『サンガジャパン』の編集方針を継承しながら、WEB上に記事を配信していくオンラインコンテンツです。 

●数カ月を1つのVolumeの期間とし、特集テーマを扱っていきます。(2021年9月~12月は『WEBサンガジャパンVol.01』、特集テーマは「なぜ今、仏教なのか」です) 

●記事の配信の形式には、「1回で全文配信」の形式と「複数回に分割して配信」の形式があります。 

●配信した記事は積み重ねられていきますので、過去の記事もお読みいただけます。 

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