アルボムッレ・スマナサーラ
【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日のテーマは「ギャンブル依存症の自分が仏教を知ってからの変化」です。
[Q]
ギャンブル依存症です。医学的治療を受けるも一時的な効果しかなく、完全にはギャンブルを止められませんでした。しかし長老が教える仏教に出会ってから少しずつ変化があり、今日までの約二年間はギャンブルをせずに済んでいます。
夢中で長老の本を読んだり、一生懸命に瞑想をしたりはしましたが、私の身に変化があったことに驚いています。医学では依存症のメカニズムを、脳内物質などで説明し、治療には薬やセラピーを用いますが、仏教ではこの依存という問題をどのように捉えることができるのでしょうか? 私の中で何が起きたのでしょうか?
[A]
■依存の発見と因果の洞察
別に知らなくてもいいのではないですか? 結果が良かったのだから。そこまでの説明は要らないと思います。何より、仏教のロジックで依存について語ると医学のそれと違ってものすごく大変なのです。
存在は依存によって成り立っています。生きるということ自体が依存ですなのですから。医学で言う疾病としての依存症だとか、脳内物質がどうのというような話は、巨大な海でちょっとした潮だまりを見せて「これが海ですよ」と言うようなものなのです。「海はそんな小さなものではない、地球の四分の三もあるのに!」と言いたくなります。ものすごく壮大な世界なのです。
仏教の教えを学んで行くと、些細なものが消えただけでまだたくさんの依存を抱えていることがわかります。その中でもタバコ・アルコール・ギャンブル等というのは最低の依存で、得るものは何もありません。理性が優って、有意義な生き方をしなくてはいけないとわかってくるとそんなものは簡単に無くなります。
ご飯を食べなかったら死んでしまいます。つまり肉体はご飯に依存していることになります。呼吸をしなかったら死ぬでしょう? 空気に依存しているからです。地球に住む生物の全ては地球の引力に依存しています。生命は完全に依存によって成り立っているのです。細胞の一個一個が周りの細胞に依存しているのです。それで心は身体に依存しているし、身体が心に依存しています。
だから仏教は依存と同時に因果法則ということも語っているのです。仏教自体が宇宙的な学問なのです。仏教的に見れば生きることが依存であるということです。
中でもどうしてもやらなくてはいけない依存は呼吸すること・ご飯食べること等ですが、敢えて依存しなくてはいけないこともあります。親孝行することや慈悲喜捨を育てること・優しい心でいること・善行為することです。全てやらなくてもいいことですが、敢えてやってください。するとより良い人生になるということが、全て因果法則にのっとって語られているのです。
■出典 『それならブッダにきいてみよう: こころ編5』
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