アルボムッレ・スマナサーラ(初期仏教長老)
スペシャルゲスト:熊野宏昭(早稲田大学人間科学学術院教授)
仏教瞑想は、生き方や人生を幸福に向かってダイナミックに変革していくお釈迦様の智慧がつまったメソッドです。2022年6月に開催した『サンガジャパンプラス』新創刊記念オンラインセミナーでは、アルボムッレ・スマナサーラ長老より、今の時代だからこそ必要なヴィパッサナー瞑想のポイントについて教えていただきました。この第2回では、「自分」の正体に気づき、悟りの境地に向かってゆくプロセスについお話いただきます。
第2回 アルボムッレ・スマナサーラ「瞑想が私たちにもたらすもの ②死の恐怖をも乗り越えた悟りの境地」
■観察者を科学的に観察する仏教
私たちはいつでも自分がつくった幻想の世界で、ありもしない「私がいる」という実感のもとで生きています。では、真理の世界は何なのか。それを知りたければ、妄想・幻想を作ること、いわゆる捏造することをやめなくてはいけません。そこで、その実践方法として「気づき」、仏教の瞑想が出てきます。私はそれこそが、本物の科学だと思います。
一般的な科学者は、自分の外にある観察対象を観察しますね。観察者のことは観察しません。自分はずっと観察する器官として存在し、自分は何かとか、どうやって自分という幻覚が成り立つのか、なぜ自分が思うことは正しいと思うのか、などということは追究しません。
仏教は、観察者を科学的に観察します。「認識するこのシステムが命ですから、では、これを観察しましょう」というのが仏教の瞑想です。マインドフルネストレーニング、あるいは気づきの瞑想で、私たちは色声香味触法というデータ・刺激を捏造しないで、そのまま見ようという訓練をします。それは相当難しいことなので、わかりやすく実践しやすいヴィパッサナー瞑想というプログラムを順番に組み立てているのです。