アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日のテーマは「瞑想実践を続けるためのポイント」です。

[Q]

     今この瞬間の境地に達するために必要な実況中継とかヴィパッサナー瞑想を日々実践しています。長老の法話を聞いたりして、しばらくはすごくやる気になって実践してみるのですが、なかなか続きません。疲れてくるとサボったり、「今日はまあいいか」と実践が続かず、自分の中でジレンマがあります。どうしたら瞑想実践を続けることができるのか、アドバイスがあればお願いいたします。
 
[A]

■心は怠けて苦しみたい


    心は、そのように怠けて苦しみたいのです。幸福になる道を教えてあげても、勘違いから脱出できず、ふたたび悩み苦しみに依存します。心が依存したがるものは、心の成長を妨げる障害なのです。ですから、たまにヴィパッサナー瞑想をした方がいいかなと思っていても、すぐに依存する方に戻ってしまうのですね。アルコールや麻薬中毒と同じようなものです。
    麻薬中毒の人に「麻薬は止めた方がいいんじゃないか?」と訊いてみてください。「本当に止めたいです」と言うだけです。しかし「今日だけ」ということで手を出してしまいます。
    ですから、私たちもヴィパッサナー瞑想をしたり、実況中継した方がいいと知ってはいるのですが、「今はまぁいいや。やめた。明日やります」ということになってしまうのです。本人は気づかないですが、「今日は妄想で生きるぞ」ということになっているのです。依存に戻るのです。

プライドを使うこと

    ですから、これは「必ずやります」「決めたことはやるぞ」という精進・誓願が必要で、そのようにプライドを使わないといけません。「私は曖昧・中途半端な性格じゃない」「やると決めたら、しっかりやる」と、「『やりたくない』という気持ちに打ち勝つことは、すごい勇気のあることだ」と、そういうふうに自分を奮い立たせることが必要なのです。
    簡単な言葉で言えば、自分のプライドを使うということです。「また負けてしまった」ではなくて、「負けてはいけない」「過去に戻ってはいけない」「将来に期待してはいけない」というプライドを持つのです。心が過去や将来を妄想している時、ヴィパッサナー瞑想を止めて悩んでいる時は、「今、心が過去の幻覚に嵌められて悩んでいる」「今、心が将来という幻覚に嵌められて悩んでいる」「今感じる悩みは将来を考えるから起きているのだ」と実況中継してみる。簡単です。「今私は瞑想を後回しにして感情の奴隷になろうとしている」とかね。
    つまり、これが悪い・これが善いという判断はしないで、「今の状況はこのようである」と確認するのです。そのように確認すると問題は解決すると思います。瞑想・実況中継では、その状況に目覚めている必要があるのです。状況の判断はしません。


■出典       『それならブッダにきいてみよう:瞑想実践編1』

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