石川勇一(臨床心理士、公認心理師、相模女子大学人間社会学部人間心理学科教授、行者)

第5回    深い平安を感じる修行生活


34.修行の衣食住

    タイの僧院での修行生活の衣食住は次のようでした。比丘が着られる衣は、原則として重衣、上衣、下衣、内衣の四種のみです。これ以外の洋服に着替えることはできません。衣は質素なものに限られており、タイで最上位のサンカラート(大僧正)や大長老であっても、私のような新参比丘であっても、誰もが一式1万円以下の衣を纏っていると聞きました。
    食は、朝の托鉢で得た一食で、完全菜食です。ブッダは殺生を厳に戒められていますが、布施された肉を食することは咎められていません。食に関しては、食の量を知るようにとだけ説かれています。それでも、この僧院のように独自の菜食の方針を掲げる場合があり、肉類が布施さてもそれを避ければ完全な菜食となります。1日1食の菜食で、毎日托鉢で長い距離を歩き、掃除や移動でも結構身体を動かすため、私は約3ヶ月間で体重が10kg減少しましたが、空腹で辛いと思ったことはありませんでした。

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クティの外観(左)と内部(右)
    住居は、石を積んでつくられた広さ4メートル×7メートルほどの広さの質素なクティ(小屋)が割り当てられました。内部には、コンクリートの寝台、小さな机と椅子、網戸付きの開放の窓、トイレと水道がひとつずつ、裸電球と蛍光灯が一灯ずつ備え付けられていました。綿の入った寝具は禁止され、薄手のマットを敷き、大きな布を賭けて寝ます。水はそのままでは飲めないので、湯沸かしポットがあります。その他、扇風機、コップ、タライ、枕、雑巾、竹箒、小さな仏像がありました。いたって簡素ですが、修行には最適で、必要十分な僧房でした。