アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「欠点も個性ですか?」という質問にスマナサーラ長老が答えます。

[Q]

   自分の悪いところも大事にした方がいいのではないでしょうか?    人間関係のためには「清濁併せ呑む」ということも必要ではないかと思います。どうでしょう?

[A]

■欠点とは一つ一つ直すべきもの

    質問は明確ですが間違いです。糞とご飯を混ぜたら結局、糞でしょう。自分の悪いところというのは、他の生命に迷惑をかけているところ・嫌がられるところを指します。それを大事にした方が人間関係も円滑になる、というのはあり得ない勘違いです。人間は完全ではありません。いきなり完全になるということもあり得ない。だからこそ完全なる人格を作るために解脱を目指さないといけないのです。
    この世の人間は不完全です。長所も短所もあります。だからといって短所を大事にするなんてとんでもない話です。短所は一つ一つ直していって、人格完成を目指すことです。道徳とは私たちがどう生きるべきかという問いへの答えです。

■身口意の行為はみな他人に関係する

    身口意(動作を行う身、言語表現を行う口、精神作用をなす心の三つに分類された人間の行為。三業)の行為は、みな他人に関係あるのです。考えるだけでも周りに迷惑かける場合がありますし、喋るならなおさらです。動物の声を聞いても気持ちが変わるのです。それから身体で行動すること。道徳とは、その三つに関わるのです。「身口意の三つで自分にも他人にも迷惑かけないようにしなさい」ということです。道徳とは、ギュッとまとめるとそれだけのことです。

■清掃係の気分で自分を見るべき

    お釈迦様は「心の成長・人格向上については満足するなかれ。しかし俗世間のことについては与えられたもので満足せよ」とおっしゃっています。悪いところは大切にするのではなく、人格向上のバネにしてください。清掃係はゴミばかり探しますが、それはゴミを処分するためです。私たちの弱点・欠点についても清掃係の気分で見るべきなのです。


■出典   『それならブッダにきいてみよう:こころ編1』 

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