アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

 皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「児童虐待に遭遇した時、自分には何ができるか」というご質問です。


[Q]

    外出時に子供を殴っている母親を見かけました。その時は何もできなかったのですが、私にできることはあるんでしょうか?


[A]

■子供は皆の子供、人類の子供です

    今の日本社会では横の人間関係が無いから、何もできないようになっていますけど、声をかけてもいいのです。ただかける方も性格ができていないとね。例えば「殴っちゃダメです!」ではなくて「子供ってそんなものだから、殴っても解決しませんよ。ちょっとリラックスして子供の気持ちを理解してみるとかどうですか?」とかね。暴力が気になったら「殴るともっと子供は悪くなりますよ」とか言ってもいいんです。問題は、実際に言えるか・言えないかなのですね。昔、交通博物館に小さな子供を連れて行ったのです。新幹線のシミュレーションがあって、たくさんの子供が並んでいるのですね。私が連れて行った子供もやりたいと言うので並ばせました。私は列の外で待っていたのですが、小学校高学年ぐらいの男の子が三人ほど、まぁ〜ふざけるわ、喋るわ、もうヤンチャでね。列から出たり入ったり、順番を入れ替わったりもうハチャメチャ。すると後ろに並んでいたちょっとキツそうな男性がいきなり怒鳴ったのです。「何をやっているんだ!」と「おとなしく順番を待ちなさい。みんなもやりたくて待っているんだから」と言ったらその子供たちがビビっちゃって、すぐおとなしくなりました。引き続き私はその男性を観察しました。すると「よし、行儀がよくて立派だね」と、その子供たちを褒めてあげたのです。あぁ、良い人だなぁと思いました。怒鳴ったけれどきちんと褒めて、ダメージをチャラにしてあげたのですね。見た目はいかつかったですが心はとても優しい人なのですね。
    だから、別に警告しても悪くないと思います。社会的な問題もあることはありますが。この母親も、ワンオペで子供を育てていたりして、いっぱいストレスが溜まっちゃって、どうすればいいのかわからないのかもしれません。正しい判断ができなくなっているのかも。だから「社会は見ている」とわかったら気をつけるようになるのです。あるいは、誰かがちょっと手を差し伸べてあげればお母さん達は楽なのですよ。子供が泣いて、泣いて泣き止まない時なんかは、周りの大人が「どうしたのかな?    ご機嫌悪いの?」などと一言かけてあげれば、お母さんの心がすーっと軽くなるのです。私は、赤ちゃんが泣いている理由がすぐわかるので、一言で泣き止ませることができるんですが、外国人がこんな赤い袈裟を着て、いきなり話しかけちゃうと怯えて、鬼を見た!    っていう感じで逃げちゃうからどうにもなりません(笑)。日本人同士の皆さんならできると思いますよ。
    子供って皆の子供でしょう。そう思わなきゃ。「○○さんの子供」ではないのです。皆の子供、人類の子供なのですね、だから、それなりに面倒を見て、守ってあげる権利は全ての人にあるんです。例えば、子供達が遊んでいて、ちょっと危険なことをやってるとします。でも「危ないなぁ〜でもそれは親の管轄だから……」と放っておいてはいけないでしょう。「触っちゃダメ!あっちに行くなよ!」と言う義務があるのです。そういうことでTPO を考えてやってください。

 
■出典 『それならブッダにきいてみよう:教育編2』 

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