【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】

 皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。

 今日のテーマは「自分らしさ」です。


[Q]

 自分らしさって何ですか?


[A]

私にも何だかわかりません

 よく聞く言葉ですが、私も何だかわからないのです。「自分らしさ」とか「自分を表現しよう」とか、案外口先だけなんじゃないでしょうか? カッコいいと思っているんでしょうか?「自分らしさを出せ」と言った人が定義してくれないと困りますね。誰もそんな事はしてくれませんから無視した方がいいですよ。「自分らしさなんかわからないから勝手にやります」という風にした方がいいと思いますけどね。

仏教的に強引に定義すると……

 ただ、それでは仏教的な言葉にならないので私が強引に定義しましょう。緊張せず、神経質になる事もなく、明るく穏やかで、失敗もなく落ち着いて生きられる――自分が素直に生きられる方法ではないでしょうか。仕事をする時も明るく穏やかにできます。それほど大きな失敗もしないし、たまたまミスをしても気にするものではないという気軽な道です。各自で発見しなくてはいけないものだから「自分らしさ」と言ってもいいと思います。ワガママにふるまうのは違いますね。それはただ、感情の発作を起こしているだけですから。穏やかでにこやかに落ち着いていられる状態こそが「自分らしさ」ではないかと考えます。

自分に貢献できる「何か」を発見しましょう

 ある人が「自分は何の役に立てるかと考えた時に出てくる独自のものが〝自分らしさ〟であって、単にやりたいことをやるのは〝自分らしさ〟ではない」と書いていましたが、それも正しいと思います。私たちは社会の一員として生きていく必要があります。その社会に貢献しなければ社会は私たちを生かしてくれません。自分にできる事を考えて発見したことを〝自分らしさ〟と定義するというのは悪くないと思います。

 他人に合わせる事が苦しいのは無理に自我を抑えているからです。かといって他人に合わせないで自然のままに自我を出してしまえば迷惑がられますし、他人に何かを与えることにはなりません。だからやっぱり「自分らしさ」とは、そのまま穏やかに生きていられる自分の道ではないかと思います。



出典 『それならブッダにきいてみよう: こころ編2』