【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「ブッダの教えは完璧な教えだといわれます。どのように作られたのですか?」という質問にスマナサーラ長老が答えます。
[Q]
ブッダの教えは完璧な教えだといわれます。どのように作られたのですか?
[A]
ブッダの教えは、基本的なところが最初からぜんぜん変わっていません。あれだけ完璧なことをどのようにして確立されたのか、誰もが不思議に思います。ですが、お釈迦様の場合、他の哲学者たちのように、なにか思想の発展のプロセスがあったのではありません。ブッダになる前には、いろいろな人から学んだりもしましたが、それらをすべて捨てて悟られました。世間で教えている方法では意味がない、うまくいかないとわか
って、それらぜんぶを捨てて、ご自分で中道を実践して真理を発見なさったのです。
真理は、すべての概念を乗り越えて達する、精神的な境地です。俗っぽく言えば、ある種の霊的経験ですが、厳密にいうと経験ではありません。経験は説明できますが、ブッダの境地は言葉になりません。語る方法がないのです。それでも「喋ってください」「この真理を人類に教えて、みなを幸せにしてください」と梵天に言われ、お釈迦様は人々に教える方法を考えられました。学校の先生が、「どうやったらこの授業の内容を
子どもたちに説得力があるように教えられるだろう」と、教える方法を考えるのと同じようなものです。
考えるのは教え方だけで、教える内容は決定しています。内容を考える必要はないのです。しかし、教えても、人々はすぐ理解してはくれません。ですから、どのように話すべきかについて、ずっと研究されました。それが対機説法といわれる、説明をする相手に合わせて教えるという、瞬間の極意についての研究です。
■出典 『ブッダの質問箱』