ジョアン・ハリファックス(禅僧・社会活動家・医療人類学者)
通訳:木蔵シャフェ君子

医療人類学の博士号を持ち、世界のトップリーダーのメンターでもある仏教指導者・禅僧のジョアン・ハリファックス老師は、被災地・刑務所・緩和医療など、もっとも困窮した現場で生きる叡智とリーダーシップを体現する存在として知られる、エンゲージドブディズム(社会参画型仏教)の旗手である。創設者であり主管を務めるアメリカ・ニューメキシコ州のウパーヤ禅センターを拠点に、100人以上のキャラバンのネパールの移動診療所を毎年設営するなど、多岐にわたる活動を展開している。そしてアメリカ国立科学財団で特別研究員、ハーバード大学での医療民族植物学の名誉研究員といった、学者としての側面も持つ。このWisdom2.0Japanの講演では「New Hope(ニューホープ)」をテーマに、新しい希望は何であるかを大会の基調講演として語られた。その採録をお届けする。


ジョアン・ハリファックス「世界を変えていくコンパッション~混沌を豊かに生きるWisdom」


■Wise Hope(賢明な希望)──驚きと想像力の産物

    まずお話をする前に、今回私を招いてくれたWisdom2.0のチームに感謝したいと思います。林仁陽(リム・ジンヤン)さん、木蔵シャフェ君子さん、そして荻野淳也さん、ソレンさん、皆さんありがとうございます。私はここ何十年間も毎年、日本を訪れていましたが、しばらく行くことができなくなり、「日本に行きたいなあ、懐かしいなあ」と、とても思っています。ぜひまた、皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。
    今回、通訳してくれる君子さん、友達として特別な感謝を述べたいと思います。様々な人を日本にコネクトする役割をどうもありがとう。そしてこのオンラインでご覧いただいている皆さん、私から皆さんにお聞きしたいことがあります。お元気ですか?    本当に皆さん、お元気でいらっしゃいますか?
    世界中を襲ったこの歴史的なパンデミックに影響されていない人は、一人もいないと思います。また私たちは、私たちの欲望が地球に及ぼした結果の恐ろしい影響、つまり大きな気候変動という脅威にさらされています。私はこのコロナや気候の大変動による心理的、社会的な影響に対処し、子どもたち、そして孫の世代の将来を考える上で、今、皆さんと「希望」と呼んでいるものに対して取り組むことがひじょうに重要であり、必要な時期だと考えています。そして、私がここで申し上げる「特別な種類の希望」というのは、とても美しいものであると感じています。私はこの「特別な希望」を“Wise Hope”、「賢明な希望」と呼んでいます。それは驚きと想像力を源としています。