シュプナル・法純(僧侶)
第4回 あなたこそ止まりなさい
■アングリマーラ経
『アングリマーラ経』という有名なお経があります。昔、インドのコーサラ国にアングリマーラと呼ばれる連続殺人鬼がいました。彼は師匠に人を殺して指を切り取り、100人(あるいは1000人)の指が集まったら最後の悟りを得ることができると騙されて、殺人を続けていたのです。ゴータマ・ブッダはそれを聞くと「私が彼に会いに行きます」と言います。人々は危険だから止めようとしますが、一人でアングリマーラが出没する地域に出かけて行きました。
アングリマーラは歩いているブッダを見つけると、殺そうとナイフを持って後を追いかけます。しかし、いくら早く走っても、ゆっくり歩いているブッダとの距離が縮まらず、近づくことができません。不思議に思い、「沙門よ、止まれ」と叫びます。するとブッダは「私は止まっています。あなたこそ止まりなさい」と言ったのです。
この「あなたこそ止まりなさい」を、ブッダは誰に言っているのか。私たちに言っているのです。私たちもアングリマーラなんですよ、ある意味ではね。どうしても止まることができない、自分自身なんです。

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