アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「子供を正したいとイライラしてしまう」という相談にスマナサーラ長老が答えます。

[Q]

    自分のことを見るように、自分の心のうちを観察するように、日々一生懸命頑張っています。しかし、私には10歳の子供がいて、自分を観ているうちに、その子のことも心配になって、子供の方も観てしまうのです。自分を正そうと思うのと同時に、子供の欠点を正すようなことをどうしてもしてしまいます。多分、自分の執着があるのだと思うのですが、自分と一緒に、強引に正そうとしてしまいます。
    傲慢というか何というか、感情的になって怒ってしまったり、イライラしたりします。相手は子供で、私の気に入ることはしないので、私はいつでも不機嫌になってしまうのです。その子の態度を直そうとするたび、どうしても自分の中に強烈な自我の働きを感じて、大変なことになっています。
    「これも躾だ」と思ってやっていることもあって、自分の強引さや傲慢さということを感じながらも、それでも子供にきつく接してしまう自分にすごく落ち込むというか、なんて難しいことか、という思いがとてもあるのです。どのように対応したらいいでしょうか?

[A]

■心を汚さないという修行


    本当に難しいことだと思いますね、自分の子供なのでどうしても愛着があるものです。他人の子供だったら「さっさと帰ってください」と言えば話が済みますけど、自分の子供だから、どうしたって一生自分が関わることになります。だから、無視しようかなと思ってもこれはちょっと難しい。しつこく言おうかな、と思っても聞いてくれない。そういうふうに状況は難しいとは思いますが、頑張るしかないのです。
    頑張る方法について説明します。今、あなたは自分の心を観ようとしているのですが、「心を汚さない」ということはやっていません。心は自我に塗れたまま・汚れたまま、ということになっているのです。ですからもうちょっと進まなければいけません。「問題は子供ではなくて自分にあるのだ。だから、汚れた心は持ちません。もし、心が汚れたら、絶対に子供としゃべりません。子供としゃべるならば、いつでもニコニコした気持ちでしゃべります」と、自分を戒めなければいけないです。子供への躾・戒めをすることは後回しにしてください。

■親の見ていないところで子供は頑張っている

    「だらしない子供を正さなくては」というのは親たちが勝手に思っているだけで、実際の子供たちはそんなに悪くありません。悪いような感じに見えても、社会に出たらずいぶん真面目に行動するものです。ただ、親にはそれが見えないだけです。
    スリランカのお寺の檀家さんにすごくやんちゃな子供たちがいて、お母さんは倒れるぐらいに苦労していました。良いお母さんで、いろいろ冗談を言ったり、工夫して躾をしているんですが、子供たちは全然聞いてくれないんです。ある時、その子供たちが私と一緒にいたのです。私といる間彼らはすごく静かでした。それぞれ自分たちがやりたいこともちゃんとやって、何の邪魔もせず、行儀よくいたのです。だから私も安心して本を読んでいました。そのうち、子供たちのお母さんが「どうせまた子供が悪さをしてるだろう」という気持ちで顔を真っ赤にして部屋に入って来たのです。そこで、私は子供にはわからないように、彼女に英語で聞いたのです。「あなたにできますかね、こういうふうに彼らを静かにさせることは」と。そう訊いたら、彼女は「私にはとても無理です」と素直に認めたのです。

■そんなに心配しなくてもいい

    私が何を言いたかったかというと、「そんなに心配しなくて良い」ということです。子供は社会に入ったらちゃんと大人しくなってくれます。しかし、母親には社会の中で一人頑張る子供の姿を見ることができないのです。いくら大人しく、行儀よく、皆で仲良くいる場合でも、お母さんが入ってきた途端、逆に和合を破りたい放題、という状態になるのです。どうしたって母親には、大人しくかっこよく行動する我が子は見られないのです。だったらどうしましょうか?    もし学校の先生とか友達が、我が子について評価していたらそれを聞いてください。他所の人が「ああ、いい子ですよ」と言ってくれたら本当にいい子です。心配する必要はありません。「そうですか。でも、家ではちょっと違うんですけどね」とか返してもいいですが。「そう、いい子なんですか、でも、家では全く鬼ですけど」とかね。そういうふうに言えれば問題は解決しますよ。そうやって、親も学んで欲しいのです。

■躾にユーモアを入れてみる

    まずはお母さんの問題なのです。お母さんが「汚れた心は持ちません。汚れた心だと私は自己破壊してしまう。私自身が自己破壊すると、私は命を預かっているのだから、一人ではないのだから、周りも破壊してしまうのだ」とよく学んで、「怒りやわがままでは一言もしゃべりません」と、しっかり心に決めて下さい。躾をしなければいけない場合は、ニコニコと「お母さんならそんなことはしないけど、頭の悪い子は仕方がないなぁ〜」とか、そういう感じで話すことです。「普通のやり方はこういうやり方だけど、頭の良くない子にはわからないのね」というふうに、何となく躾にユーモアを入れて話せば良いのです。
    子供が本当にわからない場合、全くわからないことを教えなければいけない時は、「これはこうやるんだよ」と優しく正しいやり方を教えてあげましょう。軽やかに楽しく、ニコニコと教えてあげれば結構、聞いてくれると思います。そうやって、まず自分で頑張ってみて下さい。


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