松本紹圭(僧侶)

春山慶彦(株式会社ヤマップ    代表取締役CEO)


松本紹圭氏がホストを務め、さまざまな分野における若きリーダーと対談し、新しい精神性や価値観を発見していく「Post-religion対談」。今回は株式会社ヤマップ代表取締役CEO春山慶彦氏との対談です。「山を歩く」という行為から現代社会を生きるために必要な価値を見出し続けてきた春山氏は、松本氏との対話を通してその意義をさらに深めていきます。全6話連載の第2話をお届けします。


第2話    よき祖先になるための今


■先祖教は日本版マインドフルネス

松本    私は『グッド・アンセスター    わたしたちは「よき祖先」になれるか』(あすなろ書房)という本を、2年前に翻訳しました。その中心にあるテーマは「我々はいかにしてよりよき祖先になれるか」です。
    私は今年で僧侶歴がちょうど20年になります。「この私自身がいかに生きていかに死ぬか」が仏教の中心テーマだと思って僧侶になってみたものの、実際やっていることはひたすらご先祖様のこと、死者のことでした。死者を思い出したり、供養したり。亡くなった方をどう取り扱うか。それが日本仏教の中心なんだなと実感した20年です。
    そういう日本仏教の態度に対して、「ご先祖様も大事かもしれないけど、今を生きる私の救いにならないじゃないか。もっと生き方について仏教から学びたい」と思う方も少なからずいらっしゃいます。サンガやサンガ新社という出版社が生まれたのもそういった思いを受けてのことでしょう。
    私はいったん、「日本仏教は二階建てである」と考えてみました。一階は先祖教。ご先祖様がいらっしゃる死者中心の世界です。そして二階は仏道。今を生きている人々の世界です。