アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「いろいろなヴィパッサナー瞑想の方法を試してみてもよいか?」という疑問にスマナサーラ長老が答えます。


[Q]

    ヴィパッサナー瞑想にはこちらで教えていただいたやり方以外にも、いろんな方法があるみたいで、本を読んでいろいろ試しているのですが、自分で試したりすることはやらない方がいいでしょうか?
 
[A]

■チェックポイントは「思考をやめることに挑戦しているか?」


    ヴィパッサナー瞑想のやり方はシンプルだから誰にでも本は書けます。でも、これは人間の知恵を乗り越えている世界であって、本当は誰でも書けるものでも無いのです。中には肩書きだけで本を出したりする人もいます。瞑想の本の良し悪しを見分けるのは、皆さんには難しいかもしれません。
    といっても、私は皆さんが勉強する邪魔をしたくはありません。だから次のことを理解しておいてください。ヴィパッサナー瞑想は思考をストップすることです。ですから、その実践で思考をやめることに挑戦しているのかということは大事なポイントです。
    思考をやめるといっても、それまたそう簡単ではありません。思考というのはデータを合成することです。合成しないと認識になりません。「思考」というのは単純じゃないんです。例えば花を見たとしましょう。その場合はもう頭の中で思考を合成しているんです。だから同じ花を見ても、誰でも同じように見えているわけじゃない。私たちは知らないだけで、それぞれの頭の中でいろんな概念を合成しています。他の人がどう見ているのか誰にもわかりません。猫やチョウチョが花を見たら全く違うものを見ているでしょう。ですから「花」という実感が生まれることさえ思考なんです。
    しかし、いきなり「これを見ても花に見えないようにするぞ」と思っても意味がありません。今、自分がいる位置から心が成長するしか方法は無いんです。思考にいろんな雑念・邪念が入らないように心を持っていって、その状態をさらにさらに続けていくと、どんどん思考と合成が減っていって、データのみ確認するということができるようになります。そのようなヴィパッサナーの理論を理解しているなら、どんな本を読んでもかまいません。


■出典     『それならブッダにきいてみよう:瞑想実践編2』

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