Webサンガジャパンでは「エンゲージド・ブッディズム」を特集します。
世界が混沌の度合いを深める今、仏教は社会に対してどう関わるのか。仏教と社会の関係のそもそもを問い、ブッダの教えに立ち戻りながら、「エンゲージド・ブッディズム」という言葉を手掛かりに、仏教の今を特集していきたいと思います。
仏教は誕生以来2600年に亘り、それぞれの時代、その社会、地域の社会と、どのように関係を持ってきたのか。ブッダにより、その教えが人々に説かれたとき生まれた仏教は、常に社会とともにあり続けたといってもいいのではないでしょうか。
「エンゲージド・ブッディズム」とは、仏教と社会の関係を表す今日的な考えともいえるでしょう。
この特集では、歴史、思想、そしてアクチュアルな現在を、俯瞰しかつ深く分け入り考えていきたいと思います。

  *  *  *  *  *  *  *  *

「エンゲージド・ブッディズム」は日本語で社会参画仏教とか社会参加仏教と訳されていますが、英語のEngaged Buddhismが先に言葉としてあるようです。ティク・ナット・ハン師が西洋社会の中で唱えた概念として知られていますが、ではエンゲージドブッディズムとは現代的な仏教の在り方なのでしょうか。
仏教はその始まりから、社会にコミットしているのではないか。ことさら瞑想に焦点を当て、隠棲、隠遁し、孤高を保ち黙然と修行に打ち込む修行僧、修行集団の姿を描くことは、仏教の本質を見誤ることになるのではないでしょうか。

特集では、仏教と社会のかかわりを広い視点でとらえ直しつつ、総論を島薗進先生とジョナサン・ワッツ氏にご対談いただきました。具体的なところで、日本国内にあってはベトナム人外国人技能実習生(育成就労)の支援に取り組む僧侶ティック・タム・チーさんと『海辺の彼女たち』の映画監督・藤元明緒さんの対談で、今の日本社会の問題点を浮き彫りにしていきます。また、今大変厳しい状況にあるミャンマーですが、現代ミャンマーにおける出家僧の社会的役割について、東京大学の藏本龍介先生にご寄稿いただきました。そして、世界の平和と個人の平和について、本質的な対話をアルボムッレ・スマナサーラ長老と翻訳家の島田啓介さんにご対談をいただいています。それから、エンゲージド・ブッディズムに懐疑的なポーランド出身の禅僧シュプナル法純師とエンゲージド・ブッディズムをアメリカで研究した大來尚順さんの対談。そのほかにも、仏教の最も現代的な在り方との見方もあるマインドフルネスを企業に導入するMiLiの荻野淳也さんには企業の中の個人の沈黙を問題提起いただくなど、多様な視点、立ち位置からの論考、対談などを、順次掲載していきます。

どうぞお楽しみに。