アルボムッレ・スマナサーラ


「日日是好日」という言葉をテーマにした「バッデーカラッタ・ガーター(Bhaddekaratta gāthā)」について詳しく解説した経典が、中部経典に4編収録されています。「日日是好日」偈の真髄を理解できるよう、スマナサーラ長老にこれらの解説を多面的に読み解いていただきます。


第8回    「日日是好日」偈    マハーカッチャーナ尊者の解説    ②〈過去〉


■過去を追うこととは?

    マハーカッチャーナ尊者の解説も、まず過去のところからです。

●マハーカッチャーナ尊者の解説
    Kathañca, āvuso, atītaṃ anvāgameti?
「過去を追いゆくとはどんな意味でしょうか?」

    Iti me cakkhu ahosi atītamaddhānaṃ iti rūpāti
「かつて、私の目はこのようなものであった。色(見える、観られるもの)はこのようなものであった」と想います(妄想します)。

    Tattha chandarāgappaṭibaddhaṃ hoti viññāṇaṃ
    彼の「認識」は、愛欲と繋がります。

    chandarāgappaṭibaddhattā viññāṇassa tadabhinandati
    認識が「愛欲」と繋がったので、「そこに」喜び(愛着)をおぼえるのです。

    tadabhinandanto atītaṃ anvāgameti
「そこに」喜び(愛着)をおぼえることが、「過去を追いゆく」です。

    マハーカッチャーナ尊者の解説は、先ほどのお釈迦様の解説と違うバージョンになっています。尊者は、認識というポイントから解説を始めるのです。「昔、私の眼と、眼に見えるものは、こんなものでした」「昔は眼が良くて、けっこう面白いものを見ました」と思うことから、そのように妄想するところから問題がスタートするのだ、と教えています。経典の言葉に沿って考えてみましょう。