苦しみを滅する「智慧」については、ブッダによってすでに二千五百年前に発見され、説き尽くされた。いわば完結をみたと言えよう。一方、「慈悲」については、いまだ完結に至ってはいない。一切衆生の苦しみからの解放に至るまで、「物語」は営々と続いていく。
「生きる」とは、この壮大な物語を生きる主人公のひとり、そして、紡ぎ手のひとりとして、日々一瞬一瞬、世界との共創の物語を紡いでいくことではないだろうか。


プラユキ・ナラテボー(日本人テーラワーダ仏教僧侶)
(サンガジャパンVol.8 「生きる力に目覚める仏教」)
※肩書は掲載時