アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「心が悲しいときにはどうすればいいの?」という相談にスマナサーラ長老が答えます。

[Q]

  子供からこんな質問をされました。
「心がすぐに悲しくなって涙が出てきちゃうのは、どうすれば直るの?」
本人は話したがりませんが、友達に意地悪されたりした時などに、そのような感情がすぐに湧いてきてしまうことを悩んでいるのだと思います。
「多分、一生懸命に瞑想すれば直るよ」と言うと、 
「本当に?    本当に瞑想すれば直るの?」と半信半疑の様子です。

 
[A]


■「なぜ?」という疑問を持つのは大切です

    悲しくなって涙が出る……理由があるはずです。それがわからないと直す方法もわかりません。
    何の原因も無く、理由も無く、何かが魔法みたいに出てくるわけはありません。
    私たちはいつでも、「なぜこうなるの?」という疑問を持った方が良いのです。
「なぜ?    なぜ?    なぜ?」このように調べることは勉強です。頭が良くなって、しっかりした人間になる方法です。毎日、毎日、少しずつ、理解していけば、やがて立派な人間に成長します。

■悲しくて涙が出ちゃう五つの理由

①赤ちゃんの時から子供は、泣きながら成長するものです。自分が言いたいことを言えないので、簡単に悲しくなって泣いたりします。
    しゃべることができるようになると泣くことが減っていきます。時々、小さい時よく泣いた癖が残ってしまって、4〜6歳になってもたまに泣いたりすることもありますが、それは問題ではありませんし、自然に直りますから放っておけば良いのです。

②嫌なことがあったり、いじめられたり、馬鹿にされたりすると怒ってしまいます。しかし、自分が弱くてどうすることもできません。その時、心が悲しくなって涙が出ます。自分が怒って、嫌な気分でいることは自分でもわかりません。自分に何もできないから、弱いから泣くことは「怒っているのだ」とわかった方がよいのです。
    怒ることは良くないし、頭が悪くなるし、さらに弱い人間になるから、何があっても怒らないでいるように頑張ってみることは大変立派なことです。格好良いことです。うまくできなくてもやってみるのです。
(ちょっと真面目に慈悲の瞑想をすれば見事に良くなります。怒れなくなって、明るくて、強くて、皆に好かれる人間になります。敵が無くなります。)

③物事が自分の思い通りにうまくいかなくなると、また、怒って仕方がなく、悲しくなって泣いたりすることもあります。親が欲しい物を買ってくれない時、テレビを見るのをやめなさいと言われた時、友達が本やゲームを貸してくれない時、どうしようもなく悲しくなることもあります。これも怒りです。怒っているのです。この時も、自分が弱いと思ったら涙が出ます。
    子供に対して、親が、先生が、大人が、「あれもダメ、これもダメ」とよく言いますが、それは、子供のことを大事にするからです。愛しているからです。子供は何が良いのか、何が悪いのかよくわかりません。ですから大人は「ダメ、ダメ」と同じ言葉を歌いながら子供を守ろうとするのです。やり過ぎや言い過ぎな場合もたくさんあります。
    しかし「ダメ、ダメ」という面白くもない、聞きたくもない歌を止めることは大人にはできません。この場合は「ダメ」だから止めるしかないのです。
    親に対して怒ることはとても怖い、悪いことなのです。不幸になります。
    この世でわがままは通りません。何か欲しい物があったら話し合うのです。相談するのです。納得してもらうのです。あれこれと約束を交わすのです。それで欲しいものを手に入れる。それが、賢い、良い、人間になる方法です。
(慈悲の瞑想をすると、わがままも無くなります)

④自分が病気になったり、痛くなったりする、また、学校の競技で頑張ったのに負けてしまった時、悲しくなって涙が出る。これは早く消えて、じきに楽しくなるので問題はありません。しかしこれも、本当のところ「怒り」です。怒っているのです。

⑤可哀想な人や病気で苦しんでいる動物、殴られたり、苛められたりする人を見ると悲しくなることもあります。心が優しいから悲しくなって涙が出る場合もあります。優しい涙は悪いとは言えません。しかし、泣いただけではどうにもなりません。できることなら何とかした方が良いのです。自分に何もできない場合は誰かに頼むのです。〝やさしい涙〟だけは悪くありません。良いものです。
    立派な大人になるということは、悲しんで、悩んで、苦しんでいる人を見たら泣くのをやめて、落ち着いて、助けてあげることです。そのような大人になりたいものです。

■終わりに

    慈悲の瞑想には魔法のような力があります。この瞑想を好きになるとどんな問題でも解決します。やってみて、本当か嘘かどうか試すしかないのです。

    幸福でありますように。



■出典       『それならブッダにきいてみよう:教育編1」 

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