アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日のテーマは「嘘とはったりについて」です。

[Q]

    嘘をつくのは良くない、これは分かります。適切な言葉が思い浮かばなかったので「はったり」という言葉を使ってみましたが、以下のようなことは嘘と同じ悪業になるのでしょうか?
    やったことがないことでも「自分には出来るだろう」という自信、「やってやろう」という信念、それから、「もしかしたら分からない部分があるかも知れない、全てを理解している訳ではない」と思っている事柄について、他人に堂々と説明すること、これは嘘と同じなんでしょうか?


[A]

■品格ある人は「真理を守る」のです

    嘘をつかない人は、そこら辺はすごく気を付けるんです。なぜなら、嘘に発展する恐れがあるからです。だから嘘をつかない人にも、それなりの矜恃がいっぱいあるんです。「言葉に対して高い品格を持っている人は、真理を大事にする、真理を守るのだ」と、お釈迦様は特別な言葉を使って強調しているんです。
    私たちは、いつでも真理を語れるわけではないけど、真理を大事にする・真理を守るという態度を取り続けなければいけないんです。例えば「私が思うには……」とか「私は、これはこういうことだと思いますよ」「私の考えとしては、こういうことではないか」、あるいは「私は良く分からないんだけど一応説明してあげます」などと、ちょっと言葉を補って、「知っている範囲ではこうですが、実際に調べたら全く違うかも知れませんよ」などと言うのは、嘘をつくことにはならないんです。それだけです。関西弁だと「知らんけど」みたいな感じで会話したり、「よく分からないけど……」みたいに口癖で使ったりする人もいますよね。それはそれで立派な性格ですよ。嘘っていうのは、事実を知っているのにそこを意図的に捻じ曲げて、本当のことは言わない言葉の行為です。「人を騙そう」とする気持ちが必ずあって、相手に損害を与える悪行為なんです。損害というのは色々ありますから――人を誤解させることも損害ですからね。誤解したら、誤解にもとづいて間違った行動をしてしまうでしょう。それは行為をした人の責任になってしまうんですね。そういう嘘は、ハッキリと罪になる嘘です。だからと言って人間は全てを知っているわけではないから、知らない事についてもダラダラ喋ってしまいます。その場合は、「真理を守る」という品格ある態度をとらなければいけない。それだけです。


■出典    『それならブッダにきいてみよう: こころ編4』
https://amzn.asia/d/ce200QX