【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。
今日のテーマは「緊張について」です。
[Q]
人と居るとすごく緊張するんです。落ち着きません。何かしゃべろうとするとするんですけどしゃべれないんです。
[A]
自分を高くも低くも評価しないこと
そういう現象はだいたい、自分のことをあまりにも気にする人に起こるものです。自分をずいぶん高く評価しようとしていて、それで動けなくなってしまうんですね。人間の心理っていうのは面白いんです。本当は自分をすごく高く評価しているけど、実感はとても惨め。矛盾だらけですよ。自分を惨めに感じる人は世界を大きく観ています。それで、「やっぱり間違ったらダメだ。失礼に当たったらダメだ。私がしゃべって本当に大丈夫かな」とかね。何か言われたら、妄想の中で社会や他人を大きいものだと思ってしまったりする。そうすると自分が小さく感じてしまうでしょう。それで惨めになるだけなんです。なぜ惨めに感じているのかというと、自分を結局は高く評価しているんです。自分を高く評価しているなら「俺が偉い」と威張るのが普通でしょう? でも、それは無いんです。結果が矛盾的に逆になってしまう。だからしゃべれなくなったりする。
直す方法は自分を高くも低くも評価しないこと。世界も、自分も、みんな不完全なんだから、失敗しても別にどうってことはない。自分が何かを言って「あなたの言うことはさっぱりわかりません」とあしらわれても気にすることは無いんです。自分を高く評価してしまうと「その場に合う言葉をしゃべらなくちゃ、変なことは言ってはいけない、みんなにわかるように言わなくてはいけない、みんな賛成してくれる話をしなくちゃいけない」と、限りなく気にしてしまう。そんな態度ではもう生きていられませんよ。
言うことを他人に馬鹿にされたって気にしない。それは自分の人格なんです。くだらないことを言う人間だということが、アイデンティティー(identity)というか、イメージとして成り立っているんです。アイデンティティーを確立したらそれで生きていられます。バカにされるキャラクターと認識されれば気楽なものですよ。社会というのはそういう風に成り立っています。決して完璧な関係などあり得ません。いつでも曖昧で、ガタガタで、もう問題だらけで成り立っているんです。一人ひとり不完全ですからね。その事実を理解していけば、それだけでこの問題は消えると思います。
出典 『それならブッダにきいてみよう: 人間関係編』