【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日のテーマは「人付き合い」です。
[Q]
会社で上司から「仕事をいろいろお願いしたいが、人間関係でトラブルを起こすことが多いので躊躇してしまう。仕事の広がりや話す相手が増えるサイクルになるよう努力してください」と言われました。この悩みは昔から抱えているのですが、どのように克服してよいのかわかりません。アドバイスをいただけますでしょうか?
[A]
■基礎の性格を責めない 自己嫌悪は悪行為
昔からずっと人付き合いが苦手な性格を抱えているなら、それは諦めてください。今さら突然上手になるわけがありませんから。人とトラブルを起こしがちでスムーズに付き合えないのなら、それは仕方ないことです。基礎となっている性格を直すことは難しいのです。皆、自分の性格を持て余し「この性格は良くない」と、自己嫌悪にまで陥ることがありますがそれは良くありません。ダメです。自己嫌悪に陥ることで、自分で自分の足を引っ張って、墓穴を掘ることになるからです。それでは上手くいきません。特に犯罪や悪行為をしているので無ければ、自分の性格は性格として「こんなもんだ」と認めなければいけません。まず自分が認めなければどうにもなりません。今と全く違う性格の人間になってやろうと思うのは勝手ですが、簡単にはいかないどころか無理です。性格は無始なる過去から繰り返し行った行為によって培われたものなのです。
■経験(行為)を積み重ね性格を改良していく
別に現状を克服しなくても構いません。普通に仕事をしてみてください。上司にいろいろ指摘されたら、「はい、気を付けます」とアドバイスを聞く。またトラブルが起きると思いますが、その都度「今度は気を付けます」と反省する。結局は経験を重ねて、少しずつ直していくしかありません。心の流れを変えることはそんな簡単ではないのです。簡単に人格が変わるものなら、それに越したことはないのですが。
■性格は決して私の思った通りに変わらない
例えば、仕事の資料をたくさん抱えて運んでいる人がいるとします。うっかりファイルを落としてしまった。立ち止まって屈んで拾わなければいけません。そうすると時間のロスになります。それで「あぁ、時間を無駄にしてしまった」と焦って、またファイルを落としてしまう羽目になるのです。性格というのもそんなものです。ではファイルを落とさないように、資料がバラバラにならないように、最初からファイルをゴムバンドで止めておく。それでもいいのですが、ファイルをゴムバンドでまとめる時間は結局ロスになってしまう。ゴムバンドで止めて、運んで、また向こうでゴムバンドを外す。それも時間のロスです。面倒だからと手で持って運ぶと、案の定ファイルを落としてしまう。人生はそういうものなのです。思った通りにはなりません。
■性格には柔軟性が必要、周りに助けてもらうことも大切
上司に指摘されたことについて、「私も自分の性格の拙いところを感じているので、もしよろしければ横から助けていただけないでしょうか。そそうすれば上手くいくと思います」と、サポートをお願いするとか、そういうことで対処できると思います。そんな大げさに自分の性格を変える必要はないと思います。そもそもできないのですから。例えトラブルを起こすとしても、意図的な犯罪や悪行為をするということで無ければ、たいしたことではありません。とにかく自己嫌悪にだけは陥らないでください。
■出典 『それならブッダにきいてみよう: 人間関係編2』
https://amzn.asia/d/b7NKon5