【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日のテーマは「自閉スペクトラム症の子供への接し方」です。
[Q]
自閉スペクトラム症の子供がいます。賑やかな環境が苦手で、私にも「気配が煩いから近づかないでくれ」と言います。高校受験を控えているので静かな環境で勉強させてやりたいと思うのですが、狭い家なので物理的に離れることは難しいですし、私もちゃんとやっているのか心配で、ついつい視線を送ってしまいます。気配とは何でしょうか? 気配を出さないようにする事や、子供自身が気配を感じないようにする事は可能ですか?
[A]
■悩むのではなく子供と話し合って環境を整えてください
自閉スペクトラム症というのはごく普通にあることで、これは脳の中の配線の問題ですから、余計なことを考えないで現実の状況を観て、それなりに合わせてみて下さい。だって天才たちも殆ど自閉症なんですから。
テレビで見たのですが、重度の自閉スペクトラム症でありながらプロのピアニストとして頑張っている高校生は、やはり雑音を聞いていられないそうです。外の音がうるさくて表に出られないので、ピアノの世界に入り込んで、天才的な能力を発揮。その後は社会に出ることにも慣れたそうです。自分でいろんな雑音--例えば、駅の音とかを全部録音して、それを音として聴き、脳にインプットして、理解して、今はほぼ大丈夫ということでした。絶対音感がある素晴らしい若者です。
高校生になる前にお子さんと話し合って、この子のoverload(過負荷)になるところ--脳で処理できないくらいのデータが入ってマヒしてしまうので--そこら辺をよく、どんなところが苦しいかとか、どうすればいいかとか話し合って理解を深めてみて下さい。そんなに大変なことではありません。そういう子供がいることで、結果的に親はとても勉強になるのです。
この〝気配〟って何でしょう? どんな生命も心がずっと動いていますね。心というのは現代の人々の考えでは、脳の中で起こる電気信号--電波のことですね、結局は。電波だから飛びます。なので人がいると何となく分るのです。人がいればどうしても電波を出してしまうのです。携帯電話の電波ならOFFできますけど、自分の心の機能を一時停止することはできません。サイレントモードにすることも出来ない。気配というのは恐らくそういうことでしょう。だからあなたは親としていつでも優しい心・優しい気配を作ることに挑戦してください。それで「嫌だ!」と子供が言っても、子供は悪くありません。information overload 状態になっているから耐えられないだけなのです。わがままで言っているのではなく「これは超熱くて飲めないよ」程度の話なのです。
information overloadingというのは、sound information(音の情報)などいろいろあります。子供はうるさい! と言うかもしれませんが、両親が息を殺してドブネズミみたいに気配を感じさせないようにいるのは意味が無いのです。だからといって堂々と存在感を出すのではなく、話し合ってお互い理解して、お子さんにどんどん親のinformationを送信する気配に慣れてもらって下さい。しばらくはちょっと苦しいかもしれないけど、何回かやると慣れますよ。そして、他の人々の気配にも慣れるよう、少しずつ範囲を広げてください。〝気配〟とは、心が送信する電波のことなのです。脳が発する電波だから、身体ではなく脳が受信するため、受ける人が自閉スペクトラム症だといきなりoverloadになってしまうのです。
■出典 『それならブッダにきいてみよう:教育編2』