アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「お釈迦様でも説法に失敗したことはあるのか?」という質問にスマナサーラ長老が答えます。

[Q]

    お釈迦様が説法に失敗したことはないのですか?

[A]

    2、3回程度の失敗は記録されています。最初の説法をするためにサールナートまで行く途中で、ウパカという人に会いました。その人が「あなたの師匠は誰ですか?」と聞いたのです。お釈迦様は「神々、人間の間で、師匠と仰ぐべき人は、私にはいません。私は自分ひとりの努力によって一切の真理を発見したのです」と答えたのです。お釈迦様が張り切って本当のことを説かれたのですが、相手に見事に無視されました。
    また、ときどき、図に乗ったバラモンたちから「あなたの教えはなんですか」と聞かれて、涅槃の境地を2、3行にまとめて説くこともあったのです。その答えは質問したバラモンにはまったく理解できないものでした。それでバラモンはべろを出して帰ったのです。この場合は失敗というより、意図的に理解できないように語ったことになっています。
    また、こういうことがありました。お釈迦様のところで出家して一緒に生活したスナカッタという比丘がいました。彼は超能力が欲しくて出家したのです。後に仏道をやめて還俗してしまった彼は、「ブッダには超越した経験はない。ただものの見事な理論を語っているだけ。しかし彼が言うとおりにやってみると結果がないとはいえません」と批判したのです。お釈迦様はこの批判に対して「あの愚か者は私を非難するつもりで賛嘆しているのです。師匠たるものには、自分の教えが有効的であるということは、なによりも賛嘆なのです」と、答えたのです。しかしこの弟子は、失敗作です。
    このようないくつかのケース以外、説法には失敗はなかったのです。



■出典    『ブッダの質問箱』