内田樹


仏教によって描かれる新しい社会のかたちは、思想家・武道家である内田樹氏がかねてから提唱している「コモン」の感覚抜きには語れないものだろう。今の時代に仏教に何ができるのか、その可能性を、サンガ新社代表の佐藤由樹が、内田樹氏が館長を務める凱風館を訪れうかがった。

第3回    日本仏教の独自性


「行」の真髄

佐藤    最近、瞑想も「マインドフルネス」というかたちで日本でも広まってきていますが、やはり大切なのは、何か目的を目指すことにとらわれるのではなく、まずは「やる」こと、「実践する」というそのことに意義を見出すものである点が、日本人の気質にぴったりくるのでしょうね。

内田    そうですね。日本的な「行」の特徴は、目的地がどこにあるのかがわからないということと、それにもかかわらず、今ここで具体的に何をするかははっきりわかっているということです。何のために「そんなこと」をするのか、理由は開示されないのだけれど、どういう手順で「そんなこと」をするのかについては詳細に決められている。とにかく修行者は黙って先達を信じ、先達についてゆくしかない。