パーリ経典と仏教瞑想

    Vol.2の配信開始です。
    第2号の特集はテーラワーダ仏教ど真ん中です。
    マインドフルネスが一過性のブームに終わらず言葉としても定着し、瞑想という言葉を何気ない会話の中で使っても奇異にはならず、街角ニュースのトピックに瞑想が取り上げられるような環境になり、ビジネス分野でも活用も当たり前になっているような昨今、その大本にあるのは仏教瞑想であり、ブッダの教説を伝え続けるパーリ経典であるという、基本に立ち返る契機として特集を考えました。

    昨年末開催された日本マインドフルネス学会第8回大会を聴講しました。日本での先端研究者が集い、最新の研究が発表され大変有意義な学会だったと思います(発表のいくつかは「Webサンガジャパン」で記事にしますのでどうぞお楽しみに)。2日間通して参加して、ひとつ思ったことは、そこで語られていたことは、「マインドフルネス」として、宗教をはぎ取るほど、社会は受け入れやすくなり、「適用範囲」は広がっていくが、しかしその一方で、そのことで失われていくものがあり、それが弊害を引き起こしていくのだろうということでした。
    そうした弊害の例を挙げるなら、米国で軍隊の訓練にマインドフルネスが取り入れられたり、社会的問題を個人の問題に矮小化するなどがあります。こうした問題が「マインドフルネス」の日本への輸出元である欧米圏では出てきており、瞑想は個人を成長させるツールであると同時にそれを狡知に使うならコントロールの道具にもなるという諸刃の剣の性質を見せています。

    仏教が伝えてきたものを捨象して浮かび上がるマインドフルネスには、八正道の実践が生み出す全体性や、人間の基盤となるべき四梵住(慈悲喜捨)の価値観の内面化、真の自由である解脱への希求など、仏教瞑想が置かれている仏教の文脈がありません。
    マインドフルネスが仏教を捨てたとしても、仏教が伝えるこれらの豊かな文脈は形を変え必要性を高めていくでしょう。

    瞑想文化はどう進んでいくのでしょうか。「コンパッション」や「ウェルビーイング」など、「宗教」を脱色した用語や概念を作り組み込んでいく様子には、対処療法的にマインドフルネスに対する手当を急いでしているようにも見えてきます。それならばいっそ豊かな仏教の文脈に回帰すればよさそうなものを、とも思えてきます。

    社会性を獲得しながら豊かな仏教の文脈を持つことは可能だと考えます。その手がかりをこの特集では提供できるのではないかと思います。
    ひとつにはティク・ナット・ハン師の立ち上げたプラムヴィレッジの活動があり、ヒントの塊のようなテーラワーダ仏教国タイの文化、そして日本のなかでのテーラワーダ仏教僧による教説に、ブッダの教えと社会に生きる私たちとのコミットメントの実例を見ることができると思います。

    仏教、ことにパーリ経典に基づく教説に触れることにより起きる、価値観の転換、世界の認識の変容、自他の在り方のとらえ直し、洞察から訪れる人間観、世界観の更新は、マインドフルネスのより本質的な何かを起動させます。

    マインドフルネスは仏教に包摂されているものですが、逆転してマインドフルネスが仏教をあるいは仏教の形を変えたものを包摂することができるなら、それは実質的にブッダの教えを内に宿すということに他ならないはずですが、そのときマインドフルネスは新しい次元を迎えることになるのではないか。
    そんな予感と期待を込めて、仏教ど真ん中の「パーリ経典と仏教瞑想」特集をお届けします。

    Vol.2は2022年1月から4月にかけての4か月間に、コンテンツを配信していきます。
    目次は下記のアドレスからご覧いただけます。目次の項目は新たな記事の配信が決まったら随時更新していきます。




『WEBサンガジャパン Vol.2」 特集「パーリ経典と仏教瞑想」 目次ページへ
 



『WEBサンガジャパン』とは
『WEBサンガジャパン』は、WEB上に記事を配信する形の雑誌です。 
●数ヶ月ごとにVolumeの期間を設定し、特集テーマを扱っていきます。(2022年1月~4月は『WEBサンガジャパンVol.02』、特集テーマは「パーリ経典と仏教瞑想」です) 
●記事の配信の形式は、「1回で全文配信」と「複数回に分割して配信」の2種類です。 
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