【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日のテーマは「夫婦関係」です。
[Q]
夫は、ワンマンな実父と仕事をしていて、本人曰く「とてもストレスを感じている」とのこと。彼は学生の頃から深酒の癖があり、今もよく酔っ払って帰宅し、大きな音を立てたり玄関で寝たりして大変困っています。翌日に平謝りしてきたりしますが一向に反省することなく繰り返しています。夫婦間の取り決めや、家事のルールなどのお願いをしても殆ど聞いてくれません。本人に問うても、私に何を求めているのか、私に何か改善できることがあるのか、今ひとつよくわかりません。そこで本人が深酒を止めることや、家族との関わり方についてなど改善できる方法はあるのでしょうか?
[A]
■男性は寂しい存在
長年の深酒となるとアルコール依存症の可能性もありますが、こういう人間は、失敗、失敗、失敗という精神的なデータがインストールされてしまっているのです。だから仕事をしても気分が晴れることはない。充実感もない。今の状況は一番悪いです。
今日は仕事がうまくいくのだろうかとか、家族の問題とか、精神的な不安でいっぱいで、心が傷だらけなのです。だから酒に手を出して、簡単に忘れてしまおうとしている。まさに自縄自縛の状態です。
解決策を言いますが、あなたに実行できるかどうか、私はわかりません。なぜならあなたが女性だからです。男性というのは寂しい存在なのです。男同士の信頼できる仲間なんてなかなか作れない。女性のように、表面上はみんな仲良くしても裏で陰口を言ったりするジメジメした関係はありませんが、一緒にいても友達というわけではないのです。お互いに遠慮の壁を作っているのです。そのうえ家族とも、お互いもう大人だからと、べったり仲良くするということもできない。お父さんも寂しでしょうし、この人も寂しいと思います。ちゃんとコミュニケーションが取れて理解し合うということが必要なのです。ということは、本当にいい友達ができればすぐ治ります。仏教でも「善友を探せ」と言っているのはそういうわけなのです。逆に女性には、無駄な縁を切ることを勧めます。「一人になりなさい」と。身体中に接着剤がついているみたいに、相手と離れたくないのです。出家者には女性が少なかったので、経典に記録されているわけではないのですが。
お釈迦様とその母親・パジャーパティ王妃の物語でも、関係を断ち切ることをメインにしています。涙も悲しみもなく家を捨てることは、次の王様にと立派に育ててくれた母親に対して失礼な態度です。でももうブッダ(悟った人)ですから、それが正解なのです。そして母親も仏道は「縁を切ること」だと理解して、のちに大阿羅漢になります。
■同じ目線に立って話し合ってみる
生命体として見ると、男性と女性はそれぞれ根本的に持っている性質が違います。前述のとおり、男性は寂しく女性は貪欲に生きています。特に若い男性は、家に女性がいると明るくなって、整理整頓されて、花があって、いつでも音があって嬉しくなります。つまり今が寂しいから結婚したいのです。女性は癒しのためではなく、とにかく男性を取り込みたいから結婚します。だから一人暮らしの男性の部屋と女性の部屋の雰囲気はずいぶん違うでしょう? 男性は寝るだけだから簡素でいいやと考えるけど、女は正反対に「私のお城」を作り上げるのです。
そんな男女が人生を共にするのが結婚ですが、理想的な結婚というものがあって、それは相手が〝友達〟であること。友達というのは、お互いを理解しています。相手のことを心配して、相手もこちらのことを心配する。あなたは夫の友達になったらどうでしょうか? 彼はとても寂しがっているのです。友達になると、お互いの悩みを打ち明けます。でも特に解決はいらない「そうですか、大変ですね」と一緒に悩んであげれば充分です。
この夫には一緒に悩んでくれる人がいないのです。あなたは彼を諌めているでしょう? だから彼は謝るしかないのです。それはまずいのです。尊厳的には良くありません。できることなら「あなたも大変ね」とか「あなたは仕事でいろいろ悩んでいるけど、家を守ることも結構大変なんだよ」と、同じ目線で話し合ってみる。そうやって自分の妻が友達になると、男性はしっかりするのです。友情をとても大事にするからです。それで見下す気持ちは消えてしまう。夫が悪酔いしたら、その場は文句を言わずに面倒を見てあげて、翌朝、酒が抜けてから「昨夜はあなたのお世話が大変だったんだよ」と、そうなってくると本人が考えるのです。生きるうえで大事な友達が苦労しているんだからね。そしてやっと本人が治す方向に気持ちが向かうのです。本人が実行する気になればこの問題は解決できると思います。できることなら頑張ってください。
■出典 『それならブッダにきいてみよう: 人間関係編2』
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