『サンガジャパンVol.30』特集「慈悲が世界を変える」(2018年)


出版社 ‏ : ‎ サンガ
発売日 ‏ : ‎ 2018/12/25
単行本 ‏ : ‎ 353ページ
 

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特集「慈悲が世界を変える」

 慈悲が世界を変える。人間の根本に欲がある限り、争いは絶えない。人類はその処方箋を持たないのだろうか。

 宗教に根ざした倫理ではなく、 宗教を超えた世俗倫理をダライ・ラマ十四 世は説く。「誰しも他者への思いやりの心を高く評価し、 慈しみの心と憐みの心という人間の基本的価値観をおのずと志向する」と。

 しかし、その一方で宗教が戦争の火種にもなる。このアイロニカルな二律背反性こそが宗教ともいえるだろうか。

 元来、布教ありきではなく自己救済が目標であった仏教は、 自らの修行を通じて得た功徳を受け取りつつ(自利)、 他者の幸福を願い、功徳を施し救済する(利他)、 他者のための教え、慈悲を根幹に据えた。仏教で語られる慈悲は、自らが痛む側にある「悲」(カルナー)と、 施す側に力点がある「慈」(メッタ)の両輪で一つとなる、 他者への思いやりを含んだものであり、 人助けにのみ重きを置くわけでもなく、 この自利、そして利他の心が加わる包括的なものだ。

 慈悲は現代社会においていかなる姿をとっているのか。 慈悲の思想とその実践、社会的な展開を今号では見ていくことにする。

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目次

 

アルボムッレ・スマナサーラ
慈悲のプログラムをインストールする 「自我」から「慈悲」へ―生きるOSはどう書き換わるのか?
横田南嶺×プラユキ・ナラテボー
止と観の統合から慈しみが生まれる
ネルケ無方
ネルケ流、ボーディーマインドのすすめ
Dr.バリー・カーズィン×田口ランディ
慈悲を生きるとは?
アルボムッレ・スマナサーラ×想田和弘
ミッシングピースを探して 生命が「慈悲の本質」に気づく瞬間とは?
青山俊董
慈愛―無量寺便りより
ジョアン・ハリファックス
ジョアン・ハリファックス老師が伝えるコンパッションの真意と育み
本田哲郎×宇都宮健児 
社会正義と視座の転換――慈悲的社会の実現に向けての社会運動と宗教のあり方
日髙 明
死と看取りの現場における「慈悲」の力 浄土真宗におけるビハーラ活動を踏まえて
大菅俊幸
「慈悲の社会化」に向けて――「仏教ボランティア」論
柳田敏洋
インタビュー「アガペーの人となるヴィパッサナ瞑想とは何か」 
三砂慶明
「慈悲」を読む
佐々涼子
オウム以外の人々
島田啓介
連載 第四回(最終回) マインドフルネスを歩く:マインドフルネスに導かれたぼくの二十代
アルボムッレ・スマナサーラ
パーリ経典解説 連載第五回 スッタニパータ(経集)第五「彼岸道品」 五、ドータカ仙人の問い
藤本 晃
連載第十四回 日本仏教は仏教なのか?:仏教、東へ――翻訳は文化の衝突
永井均×ネルケ無方
連載対談 仏教と哲学の対話:第一回「自己ぎりの自己」と〈私〉の独在性 ――内山興正老師の思想をめぐって