『サンガジャパンVol.21』特集「輪廻と生命観(2015年)


出版社 ‏ : ‎ サンガ
発売日 ‏ : ‎ 2015/8/28
単行本 ‏ : ‎ 350ページ
 

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特集「輪廻と生命観」

 「輪廻」という言葉が仏教にはある。パーリ語では「Sa.s.ra」という。輪廻転生、輪廻の輪、輪廻の軛くびきという使い方もされ、「仏教における最大の目的は、涅槃を証悟して輪廻の輪から解脱することである」とは、仏教における断言であるといって良いだろう。われわれが仏教を学び、実践するにおいて、その最重要の背景、足元が今回のテーマだ。またもうひとつ、「輪廻」を「生まれ変わり、死に変わりする、有情のシステム」と捉えるとき、それを「生命のシステム」と言い換えることもできるだろう。「輪廻」とはまさしく「ブッダの生命観」であり、それは現代のわれわれが、改めて「いのち」を考えるとき参照すべき視座として、大きな価値を持つものであろうと思う。そこで特集タイトルを「輪廻と生命観」とした。

 「輪廻」は、たとえば「信仰」として仏教と向き合うものには問い返すまでもない自明のことであろうし、またテーラワーダ仏教に代表されるようにブッダその人の教えに真摯に向かうとき、それは疑う余地のないことのように思える。しかるに、日本において明治以降に始まり、今に続く近代仏教学では、この自明性は成り立たないものであるようだ。仏教思想に巨大な影響を与えた哲学者・和辻哲郎(一八八九-一九六〇)は『原始仏教の実践哲学』において、仏教の輪廻説と無我説について、輪廻するのであれば輪廻する主体である我を認める必要があり、無我の考えとは矛盾する、とした。その考え方は科学的合理主義的な考え方をよしとする近代以降の思想傾向に合致するものとして、仏教内部において主流となった。「輪廻」は否定、ないしはブッダの教えとしてあたかもないもののごとく扱われてきた歴史がある。しかし和辻と同時代の仏教学者・木村泰賢(一八八一-一九三〇)は、無我であるからこそ輪廻があるとして、一般に「無我輪廻説」と呼ばれる論を提起した。それはすなわち、ブッダの生命観を理解することにほかならない。-

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目次

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[司会]宮崎哲弥 [出席]南直哉/望月海慧
【座談会】「「輪廻」とは、何か?」
藤本晃
人間に生まれるとき。人間で死ぬとき。
マハーカルナー禅師
輪廻転生と十二縁起
西澤卓美
輪廻、業、無我
佐藤剛裕
輪廻の話
浦崎雅代
開かれた死によって生きる豊かさと出会う
井上ウィマラ
GRACE プログラム2015 in 奈良
稲葉俊郎
いのちの歴史と未来の医療
イケダハヤト
デジタル時代の生きづらさと死生観
アルボムッレ・スマナサーラ × 名越康文
連載対談第一回 瞑想とディシプリン
森竹ひろこ
瞑想 on the 国会議事堂前
藤本晃
連載第五回 日本仏教は仏教なのか?