『サンガジャパンVol.29』特集「苦」(2018年)
出版社 : サンガ
発売日 : 2018/4/25
単行本 : 297ページ
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特集「苦」
「苦しみ」をなくしたいという願いは、生命が共通して希望する思いだ。私たち人間も、人生において様々なかたちで現れる苦しみをなくそうと、試行錯誤しながら生きている。
人々が苦しみをなくすためにとる行動には、いくつかのパターンがある。娯楽によって苦しみを避けようとすることもあるだろう。また、俗世での幸せを願う現世利益信仰であっても、復活を願う終末論であっても、苦しみからの救済を希求する。かたちや程度の差こそあれ、幸福を手にしようとすることは、あらゆる宗教や信仰のレゾンデートル(存在意義)であるとも言えるだろう。
そのような中で、仏教の苦へのアプローチは傑出している。単に苦を忌み嫌うだけのものとしてとらえるのではなく、この世の真理として「生きることは苦である」と語っているのだ。「苦(dukkha ドゥッカ)」は「無常」「無我」と並ぶ仏教の最重要用語である。仏教概念である「苦」の意味は「苦しみ」だけに限定されるわけではない。むしろ「苦しみ」は、「苦」という真理に含まれる一つだ。そして、だからと言って「苦しみ」を肯定しているわけではなく、「苦しみをなくすこと」こそが仏教が目指すべき肝要なゴールなのである。
あらためて確認したいことは、私たちはブッダが説いた「苦」をどれだけ理解しているのか、ということである。仏教が示す道は、信仰によって苦しみをなくすことではない。「苦」を徹底的に観察し、私たち生命が持つ命のメカニズムを洞察するところから始まるものだ。だからこそ仏教は、苦しみを合理的なかたちでなくすことができると説いている。
本特集では、この「苦」の本質について、多面的な視点から検証を試みようと思う。
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目次
小池龍之介/前野隆司
苦しみを癒す「愛」の育み方 幸福と苦しみをありのままに観察するレッスンアルボムッレ・スマナサーラ
苦しみは希望がつくる瞑想における苦の処方 バンテ・ボーディダンマ Dhamma Talk 1〜5 インタビュー 苦を見るために必要なことプラ・アキラ・アマロー(笹倉明)
タイ上座仏教への道 私が辿り着いた場所長尾俊哉
インタビュー「タイの普通の暮らしから見えてくる仏教に根ざした社会のあり方 プロイワーン(手放す)を知るタイ社会と日本の相違」アチャン・アマロー
インタビュー「アチャン・チャーの教えと現代世界における仏教の役割」アルボムッレ・スマナサーラ/藤田一照
連載対談第三回 テーラワーダからみた禅:人の道と真理の道島田啓介
連載第三回 マインドフルネスを歩く:現代の神話を紡ぐ広島の原爆の火の旅と、無我のマインドフルネス井上ウィマラ/大谷 彰
連続対談第四回 マインドフルネスの諸相を探る:「癒しの本質と自然な流れ」藤本 晃
連載第十三回 日本仏教は仏教なのか?:大乗仏教の正体永沢 哲
連載第五回 光の哲学:第一部 虹の身体 第三章 ラマ・セルポ