アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日のテーマは「日記の活用法」です。

[Q]

    日記を書こうと思っていますが、有効活用できる方法はありますか。あるいは日記なんて全く付けない方がいいのか、考えをお聞かせください。


[A]

■各自で判断すべきポイント

    うーん。仏教的には一概に言えないですね。私もいろんなアイデアが浮かぶんですよ。くだらないテレビ番組を見ていてもアイデアが湧いてくる。余りにも出てくるので、忘れないように書き記した方が良いんじゃないかと何回思ったことか(笑)。タブレットを買ったのも、アイデアが浮かんだら、パッと入力できて良いかもと思ったからです。でも一度も書いたことがありません。アイデアが浮かんだので、タブレットを持ってきて、パスワードを入れて、アプリも立ち上げて、キーパッドを打とうかなと思うともう消えているんです。もう何万回もそんな感じで(笑)。
    ですから、自分にとって忘れてはいけないこと――人生論とか、経験したこととか、今まで学んだこと――そういうことについて書き記すというのは構わないと思いますが、それは大変いいことだ!    とはちょっと答えにくいんですね。後で読んでみるとどんな気持ちになるかわからないでしょう。ですから書くなら、誰が読んでも役に立つアイデア、sort off the day という感じで、今日の自分の人生論は何なのか……とかでしょうか。
    毎日欠かさずに書く人がいますね。ドンドン増えてノートは何百冊にもなる。でも死んだら全部捨てられちゃうんです。遺族はたいてい読もうともしません。だからそれを考えちゃうといいとも悪いとも……。ただ言えるのは、悲しみや怒りや憎しみや落ち込み……そういうネガティブなものが再び現れるような記録はしない方がいいです。例えば人と喧嘩した日に、何がきっかけで、どう攻撃されたのかなどを詳しく書いてしまって、後に仲直りしていても読み返してみたらまた腹が立ってくる――そういうこともありますから、やっぱり、忘れるべき物は忘れるべきなんです。
    それから、毎日書くことが義務になってくるとストレスが溜まります。楽しみで喜んで書くなら構わないんですが、仕事や家事でクタクタに疲れているし、時間も遅くなったし、眠くて堪らない……あぁ〜眠りたいなぁ、でも日記を書かなくちゃ!    などといった状況だと苦しいだけでしょう。だから、書くならすごく楽しい気持ちで書かなくてはいけません。後で思い出しても明るい気持ちになって、背中をちょっと押してくれる。そういうものなら書いた方がいいと思います。
    私も子供たちに「文章を書きなさい」と言いますけど、狙いは作文能力を上げて欲しいからなんです。自分が思ったことを文章にできるスキルは必ず役に立ちますからね。
    それから、人類にとって立派な考えを持っていたり、新しいアイデアや役に立つことをいつも考えている方々も、メモとしてその日のうちに書き記した方が良いと思いますよ。小説家も毎日、いろんなことを調べたり、研究した日々の記録を元にフィクションを書き下ろすんですね。
    毎日書くことが楽しいか、スキルアップになるか、もしくは逆にストレスになるか、そこら辺は各自で判断するしかないんです。



■出典    『それならブッダにきいてみよう: ライフハック編2』
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