アルボムッレ・スマナサーラ(初期仏教長老)
スペシャルゲスト:熊野宏昭(早稲田大学人間科学学術院教授)
2022年6月に開催した『サンガジャパンプラス』新創刊記念オンラインセミナー「仏教瞑想とマインドフルネス──瞑想が私たちにもたらすもの」では、アルボムッレ・スマナサーラ長老より、今の時代だからこそ必要なヴィパッサナー瞑想のポイントについて教えていただきました。
そして今回の第3回では、日本におけるマインドフルネスの第一人者・熊野宏昭先生と「仏教瞑想は私たちの脳や意識や心をどのように変えていくのか?」をテーマにご対談いただきます。仏教瞑想とマインドフルネスを共に深めながら、これからの時代に欠かせない瞑想の魅力を見出していきます。
第3回 アルボムッレ・スマナサーラ×熊野宏昭 対談「因果法則への気づきと悟りへのプロセス」
■サンパジャーナによって自我を発見する
熊野 スマナサーラ長老、ありがとうございました。さっそく質問ですが、ヴィパッサナーはサティもサンパジャーナも、両方育てるということなんでしょうか。
スマナサーラ はい、そう理解したほうがわかりやすいと思います。
熊野 サティというのは「気づく」ということですが、サンパジャーナは「正しく気づく」ということですかね。
スマナサーラ 私は訳するとき、サンパジャーナを「正知」という言葉でいいます。「正しく知る」。微妙なんですよ。たとえば、リンゴが木から落ちることは誰だって知っていたでしょう? でも、ニュートンさんだけが万有引力の法則を発見したんですね。だから知っただけでは足りませんね。たとえば私は最初に「実況中継しなさい」と言います。でも、それだけでは足りません。
熊野 そう思います。なにに気づくか、どう気づくか。
スマナサーラ わかりやすく言うと「なぜ」、“Why”です。それを入れてみればサンパジャーナが起こると思います。