アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日のテーマはずばり「仏教の修行とはなんですか?」です。

[Q]

    仏教の修行とはなんですか?

[A]

    この質問の答えは、「修行ではないもの」を説明するとわかりやすいでしょう。
    お釈迦様は「出家した修行者がこれだけはやっていけない極行(きょくぎょう)」として二つを挙げています。
    ひとつは、「五欲で身体を楽しませる道(Yo cāyaṃ kāmesu kāmasukhallikānuyogo)」です。五欲というのは、「見るもの」「聞くもの」「嗅ぐもの」「味わうもの」「身体に触れるもの」です。ですから「五欲で身体を楽しませる道」というのは、いわゆる俗世間のふつうの生き方のことです。美しいものを見て、美味しいものを食べて、楽しく音楽を聴いて、踊って、ときにはアロマを焚いて……、そういう身体の五感を喜ばせて、刺激を受けて、「これこそ人生だ」、「これこそ幸福に至る道だ」、「これこそ生きる目的だ」と、欲に溺れる道を修行にすることです。
    もうひとつは、「身体を苦しませれば苦しませるほど、心が浄化するのだ」という考えに基づいた生き方です。いわゆる「苦行」です。お釈迦様は、苦行に対しても「Dukkho anariyo anattasaṃhito.」、「ドゥッコー」“苦しいだけ”、「アナリヨー」“聖者の道ではありません”、「アナッタサンヒトー」“悟りに達しません”“なにも得られません”とおっしゃいます。
    つまり、贅沢な生き方をしてもなにも得られない。身体をいじめる苦行を選んでもなにも得られない、ということです。仏教の修行はこの二つの極行を否定することが、もっとも大事なことです。この極行に陥らない生き方が仏教の修行なのです。お釈迦様はそれを「中道」と名付けます。中道の中身を八正道というのです。


■出典    『ブッダの質問箱』