SIY創設者・著者・慈善活動家 チャディ・メン・タン(Chade-Meng Tan) SIY創設者・著者・慈善活動家 チャディ・メン・タン(Chade-Meng Tan)

 サンフランシスコに発し、2020年10月に日本で初開催されたWisdom2.0は、Facebook、Zappos、eBay創設者など、今の社会に大きな影響を与えるリーダーが多数登壇され、テクノロジーの価値を認めると同時に、健全で安定した世界に通じる「気づき」と「つながり」を国際的に発信している。

 記念すべき日本初開催のカンファレンス・イベントにご登壇された、SIY創設者・著者・慈善活動家のチャディ・メン・タンさんは、「アジアの叡智(マインドフルネス)を実践されている皆さんこそが、世界の問題解決を促進するリーダーなのです」と我々に力強く語られた。

 混迷した世界の中で幸福に生きるため、マインドフルネスという叡智を我々はどのように活かしていけばよいのか。「Mind is chief」をキーワードにして、そのプロセスが明らかになる。



チャディ・メン・タンさんのご紹介

荻野 皆さんこんにちは。司会の荻野淳也です。本日はSIY創設者・著者・慈善活動家のチャディ・メン・タンさんにご登壇いただきます。

 メンさんはグーグルのトップエンジニア時代に「サーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY)を開発され、マインドフルネスの火付け役となりました。プログラムと同名の書籍は世界中でベストセラーとなっております。また、15回のノーベル平和賞ノミネート経験のあるドーン・エングル氏、アイヴァン・スヴァンジェフ氏と共にOne Billion Acts of Peace(10億の平和行動)の共同議長としてご活躍されていらっしゃいます。このOne Billion Acts of Peaceは、ノーベル平和賞に8回ノミネートされています。

 本日はメンさんにカリフォルニア、サンタクルーズからご登壇いただきます。ではメンさんよろしくお願いいたします。


メン 皆さんこんにちは。荻野さん、ご紹介ありがとうございます。

祖先から受け継いだ叡智

メン さっそくですが、始めていきましょう。まずはイマジネーションの練習から始めます。

 想像してみてください。あなたは今、とても貧しい暮らしをしています。

 そんなある日、30年前に亡くなった大叔父さんが、100億円もの莫大な財産をあなたに残してくれていたことが発覚しました。

 大叔父さんの弁護士が伝え忘れていたのです。

 皆さん、どうしますか? 100億円もの遺産を相続していたことを、今までまったく知らなかったのです。すぐにでも遺産を受け取りたいと思われますよね。

 実はこの物語のようなことが、私たちには現実に起こっているのです。

 アジア人である我々の祖先は、非常に価値あるものを残してくれました。

 それは「人生を変える力」です。

 具体的に言いましょう。「人生を変える力」とは、「心を理解するための深い叡智」と「心を自由に使いこなせるようになるための練習方法」です。

 この叡智の源は、約2500年前にインドで生まれました。そして中国に伝来しローカライズされ、独自のものになりました。ついで韓国、そして日本に伝わり、日本人である皆さんの祖先がさらにローカライズして、日本に根付かせました。

 これがまさに、我々が受け継いだ遺産です。

 大叔父さんが残してくれた100億円という多額の遺産を、皆さんならどういうふうに使いますか? たとえば1万円使うと何ができますか? おいしい食事ができますね。じゃあ1000万円ならどうでしょう。かなりいい車が買えますよね。1億円なら? 素敵な家が買えますね。じゃあ100億円全部使ったら? もう一生お金の心配をしなくてもよくなることでしょう。

10秒でできる呼吸のエクササイズ

メン では、私たちの祖先が残してくれた叡智という遺産を、ほんの少しだけ使ってみたらどうなると思いますか? 叡智を少しだけ学んで、少しだけ練習するということです。すると、ストレスと上手に付き合えるようになります。

 皆さん、今ここで10秒間のエクササイズを一緒にやってみましょう。10秒間、呼吸に優しく意識を向けてみてください。鼻とお腹、体全体で深い呼吸を1回してみてくださいね。10秒だけですよ。では始めましょう。


(実践)


 ありがとうございます。気づきましたか? 10秒ですでに皆さんの心が落ち着いたと思います。10秒前よりずっと落ち着いていますよね。たった1回の呼吸、たった10秒のエクササイズでこんなに変わるのです。

 なぜでしょう? 理由は2つあります。

 1つ目は生理学的な理由です。丁寧に呼吸すると、ゆっくりとした深い呼吸になりますよね。そういう呼吸をすると迷走神経が刺激されて副交感神経が活性化します。それによって心拍数が下がり、血圧も下がり、心が落ち着きます。たった1回の呼吸でもこのような効果があるのです。

 2つ目は心理的な理由です。呼吸に意識を集中すると、その間だけは完全に「今ここ」に存在することができます。後悔するのは過去にいるからです。心配するのは未来にいるからです。ということは、完全に今ここにいれば、一時的に後悔や心配から解放されることになります。

 後悔したり心配したりするのは、重荷を背負っているのと一緒です。だから一時的にでも、1回の呼吸の間だけでも、後悔や心配から解放されると、心身が休息を取って回復することができます。

 呼吸1回で心が落ち着くくらい、このエクササイズの効果は抜群です。

 毎日練習したら、確実にストレスが減ります。それはストレス源がなくなったからではなく、ストレスと付き合う方法を見つけられたからです。海に浮かぶ船と同じです。船は海に囲まれていても沈みませんが、水が船の中に入ってくると沈みますよね。

 心も同じで、たとえストレスがたくさんあっても、ストレスが重くのしかかりさえしなければ、浮かんでいられます。船の周りの水をなくすのではなく、船が沈まないようにすることが大事です。ストレス源をうまく管理するということですね。

 私の髪をご覧ください。私は今50歳ですけれども、黒々としていますでしょう。これはストレス管理がうまくできている証拠です(笑)。

遺産を使えば使うほど幸福になる

メン 祖先が残してくれた遺産を先ほどよりももっと使ってみると、新たに2つのスキルが得られます。

 1つ目がイントラパーソナルインテリジェンス(内省的知性)です。自分の心をよく理解して、感情をある程度コントロールできるようになります。

 2つ目がインターパーソナルインテリジェンス(対人的知性)です。共感力と社会性を身につけられます。

 この2つのスキルが身につくと、まず家族との衝突が減って、家族関係が良くなります。それだけでも人生がぐっと良くなりますね。

 仕事にも効果があります。インターパーソナルとイントラパーソナルが身につくと、今までより効率的に仕事ができます。また、常に冷静でいられて、静かな自信が漲るようになってくる。そして明晰に考えることができるようになり、効果的に人と交わることができるようにもなります。そうすると、みんなが「この人はリーダーだなあ」と思うようになって、自然とリーダーとして認められるようになっていきます。

 このように、ご先祖様から受け継いだ遺産をどんどん使っていくと。その分幸せに、より成功したキャリアを歩んでいけるようになります。とっても素晴らしいことですよね。

理由なく幸せを感じられるスキル

メン ご先祖様からの遺産をもっと使うと、さらに素晴らしいスキルが得られて、人生がうんと変わっていきます。

 そのスキルとは、特に理由がなくても、自分が満たされているという感覚、幸せであるという感覚になるということです。ただそこに座っているだけで、特別何も起こっていないけれども、自分の体と心が幸せに満たされるようになります。

 このスキルのおかげで、私自身人生が変わりました。若い頃は暗くていつも気が滅入っていて、自殺を考えたことさえ何度もありました。でも今はいつも満たされています。

「いったいどうやってそんなスキルを身につけたのだろう?」と思われるかもしれませんね。実は偶然見つけたのです。私が座る瞑想をしていたとき、まさに先ほど皆さんと一緒に行った呼吸の出入りに10秒間意識を向けるというエクササイズをしていたときだったのですけれども、ふと理由もなく「幸せだな」と感じたのです。それから自分が満たされているパーセンテージがどんどん高くなっていって、だんだん確信を持って、安心して、内なる喜びが体験できるようになりました。今では常に理由なく満たされているという状態です。

心をデフォルトの状態に戻す

メン 座る瞑想で心が静かでクリアーにすると、なぜ理由もなく心が満たされるのだと思いますか? 最初、私も理由がわからなかった。それで私の師匠の先生に尋ねました。すると驚きの答えが返ってきました。「心が静かでクリアーであるというのは、心のデフォルトの状態です。デフォルトの状態は喜びに満ちた状態なのです。ただそれだけです」と。

 非常にシンプルな回答ですよね。魔法でもミステリーでもない。当時の私にはかなりの衝撃でした。

 ですから瞑想の実践を積んで心を初期状態に戻せば、誰でも内なる喜びを経験できるのです。

 ご先祖様から受け継いだ遺産をさらにもっともっと引き出すと、実はすべての苦しみを終わらせることができます。その詳細は、またの機会に皆さんにお話できればと思います。

 今日皆さんにお伝えしたかったのは、これがWisdom2.0だということです。Wisdom2.0には2500年以上の歴史があって、脈々と受け継がれています。それを今の私たちが理解できるように、今の私たちに役に立つように見直すことが大切です。

マインドフルリーダーシップの力

メン ここからはマインドフルリーダーシップについてお話します。

 数年前のことです。アメリカの兵士がイラクの主要都市に駐屯していました。いつ何が勃発してもおかしくない非常に危険な地域でした。

 兵士たちが少人数のグループに分かれてパトロールをしていていたときのことです。怒りに満ちた市民の群れが、兵士たちに向かって歩いてきました。もし皆さんがアメリカ軍の司令官だったらどうしますか? 考える猶予は数秒しかありません。兵士と群衆との衝突が起きそうな危機的状況です。

 当時の若い司令官は、幸いにもイントラパーソナルインテリジェンスとインターパーソナルインテリジェンスを兼ね備えていました。そして仲間の部隊に言いました。「銃を下ろしなさい。そして微笑みなさい」と。

 兵士たちが言われた通りにっこり微笑むと、群衆は歩みを止めて、その後、方々に散っていったそうです。文字通り生死を分ける状況だったわけですが、若い司令官の判断のおかげで、流血の惨事は起きなかった。素晴らしいことです。

 これがマインドフルなリーダーシップの力です。誰も幸せになれないと思われるような状況を、一瞬にして幸せな状況に変えることができるのです。

世界はマインドフルリーダーシップを求めている

メン 世界は今、マインドフルリーダーシップの実践者をいつにも増して必要としています。世界は皆さんのようにマインドフルな実践をする人を求めているのです。

 なぜなら時代は今、新型コロナのパンデミックもある中で、数多くの重大な課題に直面しているからです。人々も経済も生態系も、ギリギリまでストレスが溜まって壊れる寸前です。ファシズムも世界中で台頭しています。気候変動の問題もあって、生命としての存続さえ危ぶまれています。我々は広島の原爆の5倍にも当たるほどのエネルギーを毎秒、海洋に注いでいます。結果として海水温は上昇し、海面の水位も上昇しました。世界の珊瑚礁の50%以上が過去30年の間に死滅しましたが、この先さらに多くがなくなっていくことでしょう。

 2019年、日本は記録的な猛暑でしたよね。私、実はそのとき日本にいたんですよ。8月6日に広島にいましたが、信じられないくらい暑かったです。2018年は、台風によって関西国際空港が大規模冠水し、浸水の被害もありました。大雨で200万人が避難しました。こういった極端な天候はますます増えていくと思います。

 気候変動は食料生産にも漁業にも影響を及ぼしています。海面の水位が上昇することは、日本のような島国に住んでいる人々にとっては深刻な問題です。

 気候変動の問題は、地球上の多くの問題のほんの一部です。さまざまな問題が渦巻いているからこそ、世界はマインドフルリーダーシップの実践者を必要としています。マインドフルリーダーシップは、複雑で厳しい状況の中で、極めて強力だからです。

 強いというのは基本的にいいことです。自分や、周囲の大切な人たち辛いときほど、皆さんの本当の力が発揮されます。大変なときこそ、マインドフルリーダーシップの実践者が輝くのです。

皆さんにぜひお伝えしたいのは、「Mind is chief(心が司令塔である)」ということです。

 世界は人間の心によって作られています。問題を解決するのも人間の心です。

 マインドフルネスはまさに、自分の心をマスターして熟練させることですから、マインドフルリーダーシップが世界中の課題に対する課題解決になるのです。

Mind is chief

メン マインドフルリーダーにとって大切なことが2つあります。

 1つ目は実践です。すでに実践をしている人は、より実践を深めてください。課題が大きければ大きいほど、その克服にはより深いマインドフルネス、より高いレベルの精神力が必要になります。

 ジャグリングと同じです。3つのボールをジャグリングできても、4つのボールをジャグリングするためにはより高度な技術が必要ですよね。ですから、まだ実践したことのない人はまず始めてみて、もう実践している方は、座る瞑想を毎日45分くらい行って、より高いレベルにスキルアップしてください。

 2つ目は、リードすることに尻込みしない、ということです。アジア人には少し難しいことかもしれませんけど、でもやることが大事なんです。やらなければいけないことがあるときは、ためらわずに行動してください。リーダーが必要とされているときは、あなたがそのリーダーになってください。

 それは叡智を世界に還元することになります。祖先から叡智という遺産を受け継いでいる私たちは本当にラッキーです。だから行動で世界にお返しするのです。私たちの子どもや、そのまた子どもが幸せになるための行動を起こしましょう。

 現実世界で行動を起こすということは、マインドフルネスの実践の1つです。ボクサーになりたいときと同じです。ボクサーになりたい人は、まずはジムに行って体力をつけて、攻めたり守ったりする基本的なテクニックを学びますよね。その次に何をしますか? リングの上で実際にボクシングをしますよね。実践練習です。実際に誰かとボクシングしなければ、いつまで経ってもボクサーにはなれません。

 それと一緒で、マインドフルリーダーシップを身につけるには現実世界での実践が必要です。瞑想ももちろん大切ですが、現実世界でしか開発できないスキルがあります。たとえば、ハプニングが起きたときに対処するスキル、何かをやっているときに集中力と喜びを維持すること、ストレスへの対応、絶望を乗り越えること、人をやる気にさせること、慈悲の心で部下を解雇することなどは、ただ座る瞑想をしているだけでは身につきません。実際にその場でやってみることが、実践の一部になるのんですね。

 マインドフルリーダーシップを実践するということはマインドフルネスを実践するということです。

 覚えておいてください。「Mind is chief」です。心を自由に使いこなせるようになるほど、素晴らしいリーダーになれます。

 世界では今、これまでにないほどマインドフルリーダーを必要としています。世界は、つながりを理解できる皆さんのようなリーダーを必要としているのです。

 私の話は以上です。ご静聴ありがとうございました。

努力して、手放す

荻野 メンさん、素敵なメッセージをありがとうございました。ここからは木蔵シャフェ君子も交えて3人で進行していきたいと思います。


木蔵 メンさん、お話をありがとうございました。メンさんが以前、goal-orientedとprocess-oriented、すなわち、ゴールに向かっていくというあり方と、今やっていることに向き合い続けるあり方では、process-orientedからの気づきが本当の叡智になるのではないかとお話されていました。

 今のメンさんのお話では、マインドフルリーダーになることによって、社会の問題解決ができたり、あるいは自分のストレスを解消させたり、よりよいキャリアが得られるなど、さまざまな成果が得られるということでしたけれども、それとprocess-orientedであることは矛盾しないのでしょうか? process-orientedであることとビジョンを持って成果を得ていくということが一見矛盾しているようにも感じられるのですが。メンさんはどのようにお考えですか?


メン 矛盾はまったくありません。たとえば野菜を育てたいと思ったら、まず土を耕して、それから種を植えて水をあげますよね。最初に野菜が育つためのさまざまな準備をします。そしてやることをすべてやり終えたら、後は自然の力に任せますよ。

 それと一緒で、マインドフルネスもきちんとゴールを持つことと完全に手放すことの組み合わせです。どこの部分で努力をしてどこを手放すか、そのバランスです。叡智が起きる条件を整えることに関しては一生懸命努力をする。そして条件を整えたら、後は手放して叡智が自然に起こるのを待つのです。

 寝るときって、自然に眠りにつくじゃないですか。あれは手放すことによって眠りに落ちているんですよね。

 いい眠りにつくために、条件を整えるのが大事なのも皆さんもご存知だと思います。まずは寝心地のいいベッド、清潔なベッドがいいですね。ベッドルームは整頓されていたほうがいいですし、コーヒーを飲んだら眠れなくなりますから、コーヒーは避けるとか、そういうふうによい眠りにつくための条件を整えると、変化が起きて、「よい睡眠」という成果が誘導されていきます。

 マインドフルネスの場合なら、まずは座ってみて、そして自分の心が安定化する状況を作っていきます。次のステップは行動です。ガンジーは「大事なのは言うことではなく、行動することである」と言いました。自分の行動によって、世界は変わるのです。

 望む成果がいきなり得られることはありません。自分を耕し、条件を整えることによって、成果が得られるのです。努力して、後は手放す。そして自然に委ねましょう。

 process-orientedであることと、ビジョンを持って成果を得ていくとはコインの裏表であって、なんの矛盾もありません。これでご質問の答えになっていますでしょうか。

頑張りすぎていると感じたらリラックスしてみよう

――呼吸を整えるのが難しくてできないのですが、どうすればよいでしょうか。


メン 私の経験をお話しましょうか。実は私、昔は世界一ひどい瞑想者だったんですよ。本当です。まず、まったくうまく呼吸ができなかったのです。だから、どんな方も、少なくとも私よりはましだと思って安心してください(笑)。

 当時、私は呼吸がうまくできないことに悩んでいました。先ほど、成果を得るためには努力と手放しのバランスが大事という話をしましたけど、当時の私は完全に目的思考で「うまく呼吸をする」ということに注目しすぎていたのです。

 でもいくらやってもうまくできない。だからさらに頑張りました。どうなったと思いますか? より一層、できなくなりました。そしてこれはもうだめだ、と思って一回完全に諦めました。瞑想がうまくできないから、5分間ただ座って何もしないことにしようと。

 すると気づきました。「あれ、呼吸できている」と。自分の呼吸に初めて気づいた瞬間でした。

 私はそうやって瞑想を学んでいきました。頑張りすぎはアジア人にありがちですよね。皆さんもあまりにも頑張りすぎていると気づいたら、少しリラックスしてみてください。

 私が学んだのは「何もしない」、それから「ただやる」ということです。頑張らずにただやることが、まず1つの可能性になると思います。

 今日は皆さんに10秒の呼吸の実践をしていただきましたけど、それができたならば瞑想はできます。「1時間やりなさい」と言われたらほとんどの人は躊躇すると思いますけど、1呼吸10秒だったらストレスはありませんよね。

 これがもう1つのテクニックであり可能性です。まずは一度だけやってみるということ。そこがスタートです。それができたら、また続けてみる。また続けてみる。そうやって実践がだんだん深まっていきます。

 途中で休んでも大丈夫です。ずっと続けなくても構いません。一回休めば、そこからまた次の呼吸につながっていきます。ストレスを感じずにやっていくことが大切です。

慈しみと共にある喜び

――もし呼吸を整えられたとしても、幸せに行きつかない場合はどうするのでしょうか? 呼吸を整えることと無条件の幸せの間には限りなくギャップがあるように思うのですが。


メン おっしゃる通りです。大きなギャップがありますね。ギャップを埋める方法はいくつかありますけど、1つはまず、自分を落ち着かせることです。自分を落ち着かせることだけにまずフォーカスする。それができれば、ストレスはなくなりますし、精神的にとても落ち着きますので、成功もしやすくなります。

 そしてですね、それを継続して本当に心が落ち着いてくると、自分の内側から幸せが湧き上がってくるようになります。

 エクササイズを1つ、いま一緒にやってみましょうか。これも10秒間の短い実践です。

 皆さんには大切に思っている方がいらっしゃいますよね。その人のことを考えてもらいたいんです。その人に幸せになってほしいなと考えてください。それだけです。10秒間です。


(実践)


 ありがとうございます。いかがでしたか? 幸せになってほしいな、と考えたとき、自分も少し笑顔になったり、喜びを感じたりしませんでしたか? これがまさに、慈しみの感覚と共に喜びが湧き上がってくるということです。自分の心が喜びに親しんでいくことがとても大切です。

幸せのステップ

荻野 最後に私からも1つよろしいでしょうか。先ほど、メンさんにも昔、自殺思考があったというお話をお聞きして、今や世界のヒーローであるメンさんにもそういう時期があったのか、と衝撃を受けました。その後、メンさんには何が起きて、どのような変化があったのでしょうか?


メン 3つの段階がありました。1つ目は先ほど申し上げた「喜びに親しんでいく」ということです。喜びに親しむと心が安らぎ、以前よりちょっとだけ幸せになります。自分の喜びにさらに意識を向けると、より安らぎますので、またちょっと幸せが増えます。安らぎと幸せがサイクルになっているのです。これが1つ目のステップです。

 2つ目は、自分の心を喜びに寄せていくということです。多くの人の心は怒りに寄っていきがちですけど、喜びに寄せていくんですね。

 喜びに心を寄せていく方法もいろいろありますけれども、たとえば水を飲むときにも喜びがあります。1つは、水を飲むというちょっとした喜び、水っていいねという軽い喜びで、もう1つは時間軸での喜びです。水を飲む2秒、その時間が幸せだなあと。

 普段は、そんなことも考えもしないですよね。細かい時間軸、空間軸で考えていくほど、私たちの心が注目できるものの解像度は上がっていきます。

 そして3つ目は、自分を慈しみの心で満たすということです。他の人に慈しみを向ければ向けるほど、心はどんどん満たされていきます。悪いことはまったくありません。

 私の場合は、これらの3つを総合的に実践することによって、変化が起きていきました。


荻野 ありがとうございます。皆さんにもっとメンさんのメッセージをお届けしたいのですが、時間が来てしまいました。


メン 皆さん今日はお招きいただき本当にありがとうございました。今回は日本開催のWisdom2.0に直接伺えず、本当に残念でした。毎年行きたいくらい、本当に日本が大好きなんです。近い将来、皆さんに直接お目にかかれることを楽しみにしています。


荻野 こちらこそ楽しみにしています。本日は本当にありがとうございました。



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2020年10月17日 オンラインにて開催

取材 サンガ新社編集部

構成 中田亜希

写真提供 Wisdom2.0Japan





◎Wisdom2.0Japanカンファレンス2021 開催へ向けて

 


 今年の開催は、10月2、3日(土日)です。いまのところ、オンラインを前提に進めています。

 昨年、参加した多くの方から、「うまく言葉にできないけども、大きな衝撃と気づきをもらった」というメッセージをいただいたWisdom2.0Japan。

 第2回目となる今年も、新型コロナウィルスの状況下での開催となり、世の中の状況は、まだ不透明です。

 しかし、人々に必要な気づきの種をまき続けること、そして、その種が豊かな実りとなるためにも、気づきを求める人、気づきの種を温めている人たちの集まり=気づきのコミュニティを育てていく活動を止めてはならないと思っています。

 ぼくたちに今必要なのは、「心からその方向に進みたい、目指したいと思えるビジョンであり、希望」です。

 この不透明で、混沌の時代の先に何が待っているのか、そのビジョンを明確に見て、希望を持って、前に進んでいる新しい時代を切り開くリダーたちはすでに世界、日本のあちこちで行動を起こしています。

 旧来の対立や格差を生み出すシステム、価値観ではなく、これまで人類が経験してこなかった調和とつながりの世界は、新しい外側のテクノロジーとぼくたちに内在するテクノロジー(叡智、Wisdom)で実現できるはず。

 そのような新たな世界を築こうとしているスピーカーの方々に、今年も参加してもらう予定です。

 混沌の先にある未来への気づき、そして、今ここの混沌に希望を見出す気づきを発信する場を、2021年のスピーカーの方々やWisdom2.0Japanコミュニティのみなさんとまた創り上げていきます。

 どうぞ、お楽しみに!



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Wisdom2.0Japan荻野淳也


Wisdom2.0Japan木蔵シャフェ君子





 2021年10月2日から3 日にかけて、今年のWisdom2.0Japanカンファレンスが行われます。サンガ新社も参加して取材させていただき、記事はWEBサンガジャパンで公開予定です。ぜひご期待ください。

サンガ新社編集部