アルボムッレ・スマナサーラ
【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。
[Q]
女性であるということを理由に差別された時、「あなたは女性だから○○が苦手だね」という言い方をされたりすると、ものすごく不愉快な気持ちになります。仏教では差別をする側の人間に対しては厳しい態度を取っていますが、自分が差別された側になったとき、どのような対応をするのが仏教徒として正しいでしょうか?
ちなみに、私は性別が理由で不愉快な思いをすると分かっている場所にはなるべく行かないという選択をしていますが、それはやっぱり良くないのでしょうか?
[A]
■差別は愚か者のすること
質問は差別される側、被害者としての問題についてですね。私は人種・国籍・民族・文化・宗教・性別などで差別する人を無知で愚かなバカ者だと言っています。差別される側は、まず相手が愚かであると理解し、自分の心が特に怒りで汚れないようにすればいいでしょう。自分の心を守るということです。
差別する人がいる場所にいなければならない場合、頭が狂っている連中の中に行くのですから、左も右も何も理解できない連中だと理解し自分の心を守る必要があるのです。そして、ずっと耐えなくてはいけないと覚悟して行ったらどうでしょうか?
例えば、日本でも皆が見学する猿山というのがあるでしょう。猿山は見学できるのですが、ここから立ち入り禁止というフェンスがあります。どうしても仕方なくフェンスの中に入らないといけないことになったとしましょう。そうなったら周りは猿だらけですから、何をするかわからないでしょう。ですから、自分を守る覚悟を決めて、耐える気持ちでいるしかありません。
■差別はありふれた現象
生命が他を差別するという現象は、決して特別なものではありません。ほとんどの生命は、自分が他を差別している自覚すらないのです。動物たちの世界でも、この現象は見られます。差別の表現の仕方は、種によって変わります。噛み付いたり殺したりする場合も、自分の縄張りから追い出す場合もあります。また、威嚇して終わる場合もあります。人間は差別の表現方法を人間という種にふさわしく発展させています。動物の世界のように単純ではないのです。たとえば猫は猫同士で、毛の色の差別はしません。人間になると皮膚の色で差別するのです。その差別表現も、微妙な場合から相手を殺すまで様々です。一つの民族が他の民族をまるごと差別して、虐殺する場合もあります。
■差別の根本原因は自我意識
人間の中で差別を無くそうと努力する人々もいますが、まだまだ成功に達したわけではないのです。それは差別意識を惹き起こす根本原因を発見していないからです。この根本原因はいたって簡単です。自我意識です。正しく言えば、自分が知っている世界は自分の主観であり、客観的な事実ではありません。自分が知っている主観の世界が、そのまま正しいと思っているのです。それで自分の主観の世界と違う情報が心に触れると、差別する気持ち、批判する気持ち、攻撃する気持ち、破壊する気持ち、正す気持ちなどなどがその主観を持っている人の判断によって起こります。だから、気をつけて下さい。相手を正そう、直そうとする気持ちも、もしかすると差別の表現になるかも知れません。何を隠そう、教師は生徒を差別するのです。
■差別のウィルスに感染しない/させない
理解しやすくするために表現を変えてみましょう。差別意識は遺伝子に刻まれているプログラムのようなものです。だから、差別を受けて被害者気分になるならば、この世界で生きられなくなります。COVID-19というウィルスが世界の人類を脅かしていますが、このウィルスを撲滅することはできません。唯一の解決手段は自分の身を守ることです。私たちは他の人々と付き合って生活しなくてはいけない。しかし、自分も他人も差別ウィルスに感染しているのです。正しい態度は、私が相手の差別ウィルスに感染しないように身を守ることと、相手を私の差別ウィルスに感染させないように気をつけることです。そう言うと難しく感じるでしょうか?
単刀直入に答えます。人の差別を気にしないでください。誰かから差別的態度を示されても、自分は無関心になってください。差別攻撃が激しい場合は、逃げるか反撃するかという二つの態度が見いだせます。逃げるのも嫌でしょうし、反撃すれば攻撃がさらに激しくなるでしょう。私個人の提案は、冗談を言って差別攻撃を無視することです。一つ例を出せば、「他を差別することは類人猿の時代から現代まで残っている性格です。あなたはいい加減進化したらどうですか?」というフレーズになります。しかし、冗談を言うことにも能力が必要ですから、何かと面倒くさいのです。そういうわけで、ブッダの提案に従って、無条件に生きとし生けるものを慈しむことにしましょう。
■出典 『それならブッダにきいてみよう: こころ編4』
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