【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「聞いたことをすぐ憶えるには?」という相談にスマナサーラ長老が答えます。
[Q]
聞いたことを一度で憶えて理解するためにはどうすればいいでしょうか?
[A]
■先入観なくデータを受け取ってみる
人の話を聞く場合には「聞き方」があるのです。これは子供の頃に訓練した方がいいと思います。子供の頃は、世界は巨大で恐ろしいものに見えています。それで怖がってしまうのは良くありません。その代わりに「これは何だろう?」と面白がって見てみるのです。人の話も面白がってジーッと聞いてみる。先入観なく一方的にデータを受け取ってみるのです。子供の頃から訓練するのがベストですが、大人になっても心がける事ができるポイントです。
「自分がどう思うか」ではなくて、「この人はどのように考えているのか?」と、相手の立場になって話を受け止めるのです。もう少し成長すると相手の心に飛び込んで、相手の思考に成り代わって理解する事ができます。外から入った異物としてではなく、心を開放してデータを受け取ってみる。もっとわかりやすく言うと、相手の立場になって聞く事です。
■自分の立場を措いて学ぶ方法
例えば政治の話でも、自分の支持しない政党の人の話を聞くと、批判するポイントだけ憶えて、他のポイントは逃してしまいます。そうではなく、自分が応援していてもいなくても、その人々はどんな立場で・どんな理由で・どんな目的に達するためにこの話をしているのか、というふうに話を聞けば、相手の言いたい事がよくわかります。
私の例を出すと、学生時代に龍樹(ナーガールジュナ)の哲学を学んだ時も、彼の挑戦的な論理にびっくりしたものですが、自分が龍樹になりきって学んでみたら、みるみる理解できました。その上で龍樹の思想を批判するかどうかはまた別の話です。キリスト教の聖書を勉強した時も、「神が絶対に存在する、イエスは神の子である」というキリスト教の立場をいったん受け入れた上で読みました。そうするとサーッと読めるのです。聖書というのは、仏教の立場で読むと一行も読めないくらい非論理的でおかしなテキストなので、最初から批判的に読むと内容が頭に入りません。学べないのです。ですから、最初は自分の立場を措いて、自分を捨てて読まないといけません。
■鵜呑みにするのではなく、理解すること
これは、相手の話を鵜呑みにするという事ではありません。ただ相手がなぜどんな思考で、どんな目的を目指して語っているのかと、その場その場で理解するのです。話が終わってからや後から分析するのでは無く、その場で同時に理解して終わりにすることが大事です。そうすれば中身が頭に残ります。どんな人のしゃべる事にもその人なりの一貫性がありますから。人の話を理解するためには、その一貫しているものは何かと掴むことです。それができない人には物を憶えられないし、理解するのも難しくなります。自分の頭でゴチャゴチャ考えるとダメなのです。
それから、自分に自信が無い場合も記憶できません。「理解してやるぞ、知ってやるぞ」という意欲が大事です。もちろん、自分の管轄外の専門知識は憶えられないですが、それは問題ありません。専門家が一般人向けに話す内容ならわかるはずですしね。そうやって自信を持って聞く事も大切です。
■出典 『それならブッダにきいてみよう:ライフハック編」