アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「嘘をつかないと解脱するって本当ですか?」という質問にスマナサーラ長老が答えます。

[Q]

    嘘をつかないと解脱するって本当ですか?

[A]

    本当です。嘘だけではありません。ほかの道徳も同じです。守れば解脱に達します。道徳項目のなかで、嘘は第一になっているのです。このポイントは面白いと思います。仏教では「一番重い罪はなんでしょうか?」と聞かれると、「嘘をつくことだ」と答えます。殺生、偸盗、邪淫などの罪よりも、嘘の罪は重いのです。「嘘をつくものには、この世で犯せない罪はありません」(ダンマパダ一七六)。
    道徳は解脱をゴールにして語られているものです。それには問題ありません。それが守られるのか、ということが問題です。守るのは難しいのです。誰と闘うのかというと、自分との闘いになります。自分の心に住みついている煩悩と闘わなくてはいけないのです。この闘いで勝ち続ける人は道徳を守っています。煩悩に負けた瞬間で、道徳を破っているのです。ですから戒律、道徳を守ることはたやすいことだと思わないほうがよいのです。
    人はやがて煩悩に対して完全勝利をおさめます。そのときは「嘘をつかない」ではなく「嘘をつけない」、「怒らない」ではなく「怒れない」、「欲張らない」ではなく「欲張れない」、「迷う」ではなく「迷えない」人になっているのです。嘘をつかないよりは、嘘をつけないほうが楽で自然です。怒らないのはたいへんですが、怒れないのは楽で自然です。道徳の完成は解脱を意味します。



■出典    『ブッダの質問箱』