アルボムッレ・スマナサーラ

【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】 

    皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は「認知症の家族との向き合い方」についてスマナサーラ長老が答えます。


[Q]

    認知症の母親の症状が、年々ひどくなってきています。病気であることは分かっているのですが、家族としてどのように割り切ればいいのか悩みます。どのようにすればいいか教えてください?
 
[A]

■お母様の「新しい人生」を尊重しましょう

    本人が認知症になっても、私たちは本人が変わっていない・変わって欲しくない、という気持ちを持っているのです。例えば、昔と同じように立派な親であって欲しいという希望があるのです。これでトラブルになるのですね。
    もう昔のお母様ではありません。人間の人格というのは、知識(記憶)のレベルで決まります。以前の知識は忘れてしまったのですから、見て欲しいのは今いる人なのです。今、どのレベルで理解能力のある生命体なのか?    ということです。
    わかりやすく言いますけど、いろんなものを忘れてもある一部は憶えているのです。この一部の記憶でその人の年齢が決まります。例えば本人が30代の記憶を一番持っているのなら30代だった世界にいるのです。その時、あなた(子供)が生まれていなかったなら、あなたは息子・娘ではありません。残念ですけどね。例えば20代まで戻ったなら、子供が顔を見せても「あなたは誰?」と訊くのです。それに驚く必要はありません。そのまま受け止めて「私たちは知り合いですから仲良くしましょう」と、それでいいのです。自己紹介をして、憶えてくださいと頼めばいいのです。
    そのようにして、認知症になった方々の新しい人生に私たちが合わせなくてはいけません。家族の感情もありますから結構難しいのですけどね。子供や家族にとっては、やはりお母様やお父様ですから。「こんなからかった態度を取っていいのか?」という後ろめたさは起こりますが、からかっているわけではなく、それが正しく看病する方法なのです。


■出典     『それならブッダにきいてみよう:人間関係編』

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