石川勇一(臨床心理士、公認心理師、相模女子大学人間社会学部人間心理学科教授、行者)

第6回    修行の深まり


41.タモ山とカレン族の誇り

    プラプッタバートダモ寺院には、本山から南東1,500メートルほどの場所に別院があります。その別院はタモ山という尖った山の麓にあります。2月14日、食事後しばらくすると、執事のラーさんが車で別院まで送ってくださり、パンニャーワロー比丘がこの山を案内してくださいました。かなり切り立った山で、急勾配の坂を登り、約1,500段の階段を登っていきました。途中で洞窟があり、以前、この洞窟に寝泊まりし、ここから毎朝鉢を持って山を下り、村に行って托鉢を行うという修行生活をしていた日本人のF比丘のことを教えてくれました。私は回峰行をする山伏のような修行者だと思いましたが、F比丘は元禅僧で、とてつもない高いエネルギーで修行に励まれていたそうです。F比丘は現在はスリランカで修行をされているそうです。
    洞窟のある場所からさらに急勾配の梯子のような階段を登っていくと山頂に着きます。草履で歩いているので注意深く登りました。山頂には白い大きな仏塔が建てられていました。車が入れないこのような尖った山の山頂に、よくもこれだけの石を運び、山頂に塔を建てたものだと思います。
    この地域は、少数民族のカレン族が多く住んでおり、彼らがこの仏塔を建てたということです。カレン人は独自の言語と文字を持ち、仏塔の近くには、カレン語で何かが書かれた石盤もありました。執事のラーさんもカレン族ですし、斜面に位置する本山を多くの石を積んでつくり上げたのもカレン族の方々ということです。カレン族の勤勉さと深い仏教信仰が感じられます。
    私は毎日の托鉢と掃除で体重は減少し、脚も結構鍛えられてきていましたが、切り立ったタモ山を下りる頃には脚がガクガクになっていました。

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上段左から:タモ山山頂付近、山中の洞窟、山頂の仏塔、中段左から:カレン語で書かれた石盤、タモ山を降りるパンニャーワロー比丘、下段左から:タモ山山頂付近、タモ山のタンマラトー比丘