【聞き手】藤田一照


ヨンゲ・ミンギュル・リンポチェ 藤田一照


チベット仏教の次代の担い手であり現在の世界仏教を代表する一人であるヨンゲ・ミンギュル・リンポチェに、ご自身の生い立ち、パニック発作を克服した瞑想修行、そしてコロナ禍の世界と仏教のこれからについて、禅僧の藤田一照師が聞き手となってうかがった。

ヨンゲ・ミンギュル・リンポチェ ヨンゲ・ミンギュル・リンポチェ


第4回 コロナ禍の世界を生きる

仏教とは「喜び、幸福、変容」のメッセージ

一照 リンポチェがご出版された英語の著作には The Joy of Living(生きる喜び)ですとか、Joyful Wisdom (喜ばしき智慧)とかとてもポジティブなタイトルがつけられていて、どちらの本の表紙にもにこやかに微笑んでいるリンポチェがおられて、とても軽快で明るくそしてハッピーな印象を受けました。

The Joy of Living: Unlocking the Secret and Science of Happiness By Yongey Mingyur Rinpoche with Eric Swanson, Daniel Goleman https://tergar.org/resources/books-by-mingyur-rinpoche/ The Joy of Living: Unlocking the Secret and Science of Happiness By Yongey Mingyur Rinpoche with Eric Swanson, Daniel Goleman
Joyful Wisdom: Embracing Change and Finding Freedom By Yongey Mingyur Rinpoche with Eric Swanson https://tergar.org/resources/books-by-mingyur-rinpoche/ Joyful Wisdom: Embracing Change and Finding Freedom By Yongey Mingyur Rinpoche with Eric Swanson
世界中に多くの支持者を持つ 世界中に多くの支持者を持つ

 仏教というものはネガティブな教えで、人生は苦であるというような、全ては苦しみであるというようなことを説いていて、暗くて重い宗教だといった印象を持っている人が多いと思うのですが、リンポチェはその反対の仏教というのは実はポジティブで明るいメッセージなんだということを意識的に強調しておられるようです。仏教について語るときに、喜びであったり、幸福というものを強調されるリンポチェのお考えをお聞かせ願えますか?


リンポチェ 特に西洋においては、よく仏教に対する誤解がありますね。仏教はパッシブ(受け身的)なものと捉えられているというか。例えば出離(厭世観)というものも、普通の人生の全てを諦めなければいけないとか。しかし、執着を離れることや手放すことは、諦めることではありません。手放すことと諦めることは、異なるのです。

 仏教の主なメッセージは、喜び、幸福、変容です。仏教は、苦しみが喜びに変容される、問題や苦悩がチャンスになる、障害が道になるという実践です。それが仏教の主なメッセージだからこそ、著書のタイトルにもエッセンスを凝縮できたらと心がけています。


一照 現在、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって世界中に多くの苦しみが生み出されていますけれども、このようなときにおいてこそ単なるハッピーなメッセージだけでなく、そういう状況を力強く生き抜き、乗り越えていく、何らかの具体的な実践方法が求められています。リンポチェの言葉を借りると、困難な状況から逃げるのではなく、それを友達にすることによってそれを変容させるような実践方法について何かアドバイスをいただけませんか?