名越康文(精神科医)


現代社会を生きる上で仏教を自分の人生に活かし、行動をよりよく変えていくにはどうすれはよいでしょうか。瞑想の実践者であり精神科医である名越康文先生に、仏教の実践が人生にもたらす作用や、日々のよい行いのための具体的な実践法を尋ね、仏教的な生き方の本質に迫ります。


第3回    心の内側の声を聞き、日々、自分という山を登る


●“内側が動く”感覚が変容のカギ

名越    日本には落語や浄瑠璃といった固有の文化が残っていますが、たとえば観ていて「これ、上手だけど伝わってこないな」とかいうこともあるんですよね。そういうときの半分は僕自身が意識が外側に向きすぎているときですね。本来、芸術やアートは、それを観て感動するときは、自分の内側がわーっと動くような感覚が得られるはずなんですけど、今は、むしろ刺激を求めるというか、味わう準備が滞っているときがあります。

編集部    日本文化である能なども仏教文化が根っこにあって生まれてきたもので、観ることによって自身の心が変容していく体験を起こすことが可能になるもの、ということですよね。