名越康文(精神科医)


現代社会を生きる上で仏教を自分の人生に活かし、行動をよりよく変えていくにはどうすれはよいでしょうか。瞑想の実践者であり精神科医である名越康文先生に、仏教の実践が人生にもたらす作用や、日々のよい行いのための具体的な実践法を尋ね、仏教的な生き方の本質に迫ります。


第6回    湧き出る欲は行動変容のチャンス


編集部    先生は、ふだんのちょっとした時間でも自分の内側の声を聞くようなことを続けていらっしゃって、それは結跏趺坐などしなくても瞑想だし、それによって自分が変わってきたとご実感されているんですね。

名越    そうです。以前、僕が「欲しい欲しい」と言っていたのは餓鬼道の欲しいというか、乾きなんですよ。でも今の「欲しい」は前よりもずっと「んー、やっぱりこれは必要だな」というところからになった気はします。
    たとえばボトル型浄水器というんでしょうか、水道水を入れると浄水になる水筒みたいなものってありますよね。毎回、ペットボトル飲料を買うよりエコになっていいなと思ってそれを買ったりね。そういうふうに吟味して買うと、ちょっと豊かな気持ちで買い物ができたりする。逆に言えば、いったん心が静かにならないと納得して買うというふうにならないですね。そんなものも瞑想だと思っています。