アルボムッレ・スマナサーラ(初期仏教長老)
スペシャルゲスト:島田啓介(翻訳・執筆家)

戦争や災害が繰り返し起こり、辛い現実や悲しいニュースが日々飛び込んできます。どうすれば私たちは困難な時代をくじけることなく生き、世界としっかり関わっていけるのでしょうか?    世界をより良く変えていく瞑想実践について、スマナサーラ長老にご教示いただくオンラインイベントを全5回でお届けします。第2回からはスマナサーラ長老とスペシャルゲストの島田啓介氏の対談をご紹介していきます。


第2回    スマナサーラ長老と島田啓介氏の対話①平和のポイントは慈悲(母なる心)


■生きる矛盾を平和活動でごまかしている

島田    スマナサーラ長老、ご法話、ありがとうございました。「そもそも生命が生きるということには矛盾がある」とおっしゃったことに「なるほど」と思いました。食べて生きる私たちは、どうしても殺さなければいけない。私は宮沢賢治という作家が好きで、彼の作品を読み解く講座もやっているんですが、『よだかの星』という作品があります。鷹が虫を殺して食べなくてはいけないことをとても嘆いて、その嘆き悲しみのあまりに星になってしまうという話です。自分が虫を食べるというふうに運命づけられているならば、それを食べていかなくてはなりません。ところがそれを周りからも責められ、自分でもたいへん悔やんで星になったということなのですが、私自身もそうですね。生きている矛盾を薄々感じながら、それをないものにしたい。ですから「これはこうだ」と、白か黒に決めたいという気持ちになってしまうんです。