【スマナサーラ長老に聞いてみよう!】
皆さんからのさまざまな質問に、初期仏教のアルボムッレ・スマナサーラ長老がブッダの智慧で答えていくコーナーです。日々の生活にブッダの智慧を取り入れていきましょう。今日は引きこもりの子どもについてのお悩みにスマナサーラ長老が答えます。
[Q]
息子のことで相談いたします。大学卒業後に一旦就職したのですが、うつ状態で会社を辞めました。それからはアルバイト生活をしていたのですが、不況で失職しました。就活する気力も無く、去年自宅に帰ってきましたが、以来、ひきこもり状態です。息子にどのように接すればよいのか、アドバイスを頂きたいのです。
[A]
■ひきこもりの放置は危険です
ひきこもりは精神的なガンのようなものです。放置すると危ないです。まずは息子さんに責任感を持たせて、家の仕事を増やすことです。でも、最終的には社会に出て行かないといけません。生命には「何かやりたい」というエネルギーがありますが、ひきこもりは精神的なガンなので責任を取らなくていい、コンピューターやゲームといった機械をいじるような安心なことしかしないのです。その状態を破るためには、責任ある仕事をさせないといけません。買い物とか、料理のような責任感が必要なことです。もしできたら「ちょっと助かったわ」と軽く褒めてあげてください。うまく行ったという経験で徐々に心が治っていくのです。人生はいつでも厳しいもの。戦って、戦って、何とか生きていられるだけです。しぶとくなければ生きていられません。
動物が子育てに失敗しないのは、世界は安心だと教えられていないからです。「ちょっと失敗したら、あなたは命を落としますよ」と教えられています。人間だけは「世界が安心だ」という錯覚・妄想概念でやられてしまうのです。
■「世界はヤバい」と思わないと精神が育たない
私たちは「粘り強い精神」を作らなくてはいけません。強い精神が育つのは「世界はヤバい」と思っている時だけです。親の願いは子供が自立することだと、子供に理解させて欲しいです。「仕事というのはキツイに決まっているんだよ」と教えてあげて下さい。自分の経験を大げさにふくらませてでも、社会の厳しさを教えてあげることです。でも自分はめげなかったんだと。成功経験は口にせず、いかに大変だったかを話してみてください。
残念ですが日本には引きこもりが多いです。スリランカではありません。社会に「安心できる」という雰囲気が無く、何とかして仕事を探さないといけないからです。仕事があってもすぐクビになるかもしれません。日本はオープンな社会では無いのですね。家族という小さいグループで生きていると広い世界に行けなくなります。仏教で言うように、オープンな社会で子育てをしないといけません。いろんな人のところに遊びに行って、育ててもらって、社会は競争して生き残らないといけないのだ、と学ばないといけないのです。
■親が子供に伝えるべきメッセージ
日本は子供が減って老人社会になって、しかも若者は仕事ができないのだから、社会は厳しいということを学んでもらって、しぶとく生きていく能力を身につけて欲しいのです。早く治療した方がいいですね。うつ状態になってもいいけれど、一日で終わりにして欲しい。一日以上続くと危険です。
生きていれば時々、嫌な気分になることもあるでしょう。でも、一日で立ち上がるのだと。翌日の朝には持ち越さないことです。「こんなことを気にするか、負けるかと」一日でうつの気分を破らないとどうしようもないのです。社会は怖いところです。でも、怖いから逃げるのではなく、しぶとく生き残れ、というメッセージを伝えなくてはいけません。
■出典 『それならブッダにきいてみよう:教育編1』